モデルフォレスト(読み)もでるふぉれすと(英語表記)model forest

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モデルフォレスト」の意味・わかりやすい解説

モデルフォレスト
もでるふぉれすと
model forest

森林における自然環境や生物多様性を、社会経済とのバランスを図りながら、サステイナブル持続可能)な方法で管理する活動。森林の景観を保護し、自然資源として持続可能な発展の基盤をつくることを長期的な目標としており、それぞれの地域社会で利害関係をもつ団体や地域住民などが共同で、保全管理や経済的な発展の研究に取り組むための拠点となる。おもな取り組みには以下のようなものがある。(1)生物多様性の保全。(2)森林の生態系における健全性の維持と回復。(3)森林生態系の生産力の向上。(4)土壌水源の保全。(5)レクリエーションや観光を含めた経済的な便益の維持と増進

 モデルフォレストという概念は、1990年代初めにカナダで生まれた。カナダ連邦政府は、森林の持続的な開発を目標の一つとしたグリーンプランを策定し、実験的な取り組みを開始した。これらの実証実験に効果がみられたため、新たな森林管理の活動が全国規模で行われるようになった。2014年時点で、カナダ国内ではモデルフォレストの活動拠点となる14のCMFN(Canadian Model Forest Network)が運営されており、先住民を含む200以上の地域住民のコミュニティ、500を超える自治体や組織、企業などがこれに参加している。モデルフォレストとは、カナダで開発された持続可能な森林管理(SFM:sustainable forest management)のモデルを意味するものといってよい。カナダ政府はモデルフォレストの国際ネットワーク(IMFN:International Model Forest Network)の構築を目ざし、1992年にブラジルで開催された環境と開発に関する国連会議(国連地球サミット)で、メキシコや極東ロシアなどへの資金援助を表明した。これを機に世界的な活動として広がり、2014年時点では20を超える国の、55地区以上で活動が展開されている。

 日本でも2005年(平成17)に京都府が「豊かな緑を守る条例」を制定し、京都モデルフォレスト創造事業を開始した。企業などの38団体による35か所の森林づくり(2013年時点)、大学林野庁と協働した森林保全の取り組みなどのさまざまな活動が行われており、2012年度には、林業や森林保全活動に関する実践的な技術や知識を身につけた人材の育成を目ざし、林業専門の京都府立林業大学校が京都府京丹波(きょうたんば)町に開校した。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例