メギ(英語表記)(Japanese) barberry
Berberis thunbergii DC.

改訂新版 世界大百科事典 「メギ」の意味・わかりやすい解説

メギ
(Japanese) barberry
Berberis thunbergii DC.

メギ科の落葉低木。鋭いとげがあるので,コトリトマラズヨロイドオシなどの名もある。高さ1~4m,幹には縦に稜がある。とげは葉が変形したもの。葉は全縁で短枝に集中してつき,単葉だが,複葉起源と考えられている。托葉はない。枝から垂れ下がった花序は散形状の集散花序。花期は4月。花は黄色で6枚の萼片,6枚の花弁,6本のおしべ,1本のめしべからなる。花弁の基部には2個の蜜腺がある。おしべの花糸は触れるとめしべ側へ傾く。果実はつやのある赤色で秋に熟し,中に1~2個の種子をもつ。本州中部以西,四国,九州に分布する。樹皮や茎葉は染料に使われ,スズ媒染で黄色になる。茎の木部を日本では小蘗(しようばく)とよぶ。ベルベリンberberineなどのアルカロイドを含み,苦味健胃薬に用いる。また葉および木部の煎汁を眼の充血,炎症の洗眼料とする。和名の目木(めぎ)はこれからついたという。

 メギ属Berberis(英名barberry)は世界に約500種が分布し,とくに中国~ヒマラヤにかけて種数が多い。日本にはメギのほかにオオバメギB.tschonoskyanaヘビノボラズB.siebordiiヒロハヘビノボラズB.amurensis var.japonicaが分布している。
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双子葉植物,離弁花類の1科で,木本と草本を含む。薬用植物や観賞用植物を多く有し,ナンテン,メギ,イカリソウミヤオソウなど16属約650種からなる科である。アケビ科,ツヅラフジ科に近縁で,ナンテン属は別科ナンテン科にされることがある。葉は互生で,単葉から複葉まであって変化に富む。通常,托葉はない。葉鞘(ようしよう)はよく発達し,托葉状の2枚の裂片がつくことがある。草本はすべて多年草で地下茎はよく発達する。木本は灌木状で材の発達はよくない。花は両性花,放射相称,子房上位で,萼片,花弁,おしべは3数性の輪生配列(ただしイカリソウ属では十字対生)。外側の萼片は早落性で,内側の萼片は花弁状に大きくなることが多い。花弁は蜜腺をもつものともたないものとがあり,また時として小さく蜜腺状になる。おしべは花弁に対生し,通常,葯は弁開する(ただし,ナンテン属,ミヤオソウ属では縦裂開)。めしべは1本で,子房室も1室。胎座は基生,側膜型がある。果実は蒴果(さくか)か液果,まれに閉果で,種子が裸出する。北半球の温帯が分布の中心だが,多くの属がトガクシソウ属,ナンテン属などのような地域に固有な属,あるいはルイヨウボタン属,サンカヨウ属,ナンブソウ属などのように東アジアと北アメリカに隔離分布するものである。ただしメギ属は分布が広く,南アメリカ,アフリカにまで及んでいる。

 中国や日本ではイカリソウ属は強壮薬として,メギ属,ヒイラギナンテン属は世界各国で胃腸薬,眼の洗浄液として,ナンテン属は日本では咳止め,胃腸薬に,ミヤオソウ属は中国,台湾,インド,アメリカで解毒薬,瀉下薬として用いられている。これらの効きめは主に,ベルベリンなどのアルカロイドによるものとされる。また花や果実が美しいので,庭木や山草として好んで栽培される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「メギ」の意味・わかりやすい解説

メギ
めぎ / 目木
[学] Berberis thunbergii DC.

メギ科(APG分類:メギ科)の落葉低木。枝は長枝と短枝があり、短枝に葉を束生する。葉は互生し、小形のへら形で全縁。長枝の葉は刺(とげ)に変形する。4~5月、散形状の集散花序をつくり、黄色花を開く。萼片(がくへん)は6枚、花弁は6枚で2個の蜜腺(みつせん)がある。雄しべは6本、葯(やく)は弁開する。刺激を与えると、花糸は雌しべ側へ傾く。雌しべは1本、子房は1室で中に胚珠(はいしゅ)が2、3個ある。果実は赤色の液果。山地に生え、中部地方以西の本州から九州に分布する。名は、茎や葉を煎(せん)じて洗眼に使うことによる。

 メギ属の植物は刺が鋭いのでヨロイドオシ、トリトマラズなどの異名がある。コムギに害を与えるサビ菌のサビ胞子の寄主として知られている。また、ベルベリンなどのアルカロイドが含まれるため、古くから眼病薬、胃薬などに用いられるほか、庭木としても利用される。世界に約600種知られ、北半球の温帯域を中心に、アフリカ、南アメリカまで分布する。日本にはメギ、オオバメギ、ヘビノボラズ、ヒロハヘビノボラズ、ヒイラギナンテンが生育する。

[寺林 進 2019年9月17日]


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百科事典マイペディア 「メギ」の意味・わかりやすい解説

メギ

コトリトマラズとも。メギ科の落葉小低木。本州(関東以西)〜九州の山野にはえる。小枝を分かって茂り,鋭いとげがある。葉は倒卵形で小さく,裏面は白みがあり,とげの付け根などに束生,若枝では互生する。4〜5月,葉と同時に,径約6mmの黄色花が2〜4個ずつ集まって咲く。萼片(がくへん)は6枚で花弁状,花弁は小さく,おしべとともに6個。果実は長楕円形で秋,赤熟。ベルベリンなどのアルカロイドを含み,胃腸薬にする。煎汁を洗眼に用い,目木の名もこれに由来。庭木,生垣とする。近縁のヘビノボラズは中部以西の山野にはえ,葉は長倒卵形で縁には小刺毛があり,5〜6月,黄色の6弁花を開く。果実は球形。

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