日本大百科全書(ニッポニカ)「マニラアサ」の解説
マニラアサ
まにらあさ
[学] Musa textilis Neé
バショウ科(APG分類:バショウ科)の多年草。茎は地中にあって地下茎となるので、地上に柱状に立つのは、葉鞘(ようしょう)が重なり合ってできている偽茎である。2~3メートルの偽茎の先に長さ約2メートル、幅約30センチメートルの長楕円(ちょうだえん)形の葉身が多数つく。形状は同属のバナナに似ているが、葉身の幅がやや狭く、葉の数が多いことで区別される。花茎は偽茎の中を伸び、偽茎の頂部から抽出する。花は穂状花序につき、花序の軸は太く、多くの節があり、各節に、包葉に包まれた多くの花がある。花穂の先端部には雄花が、基部には雌花が密生する。果実は長さ5~8センチメートル、径約2.5センチメートルで、多数の黒い種子がある。果実の形はバナナに似ているが、食用にはならない。
葉鞘の表皮の下に繊維があり、これを加工したのがマニラ麻Manila hemp, abacaである。繊維をとるには、まず偽茎を伐(き)り倒し、小刀で基部に切れ目を入れ、約5センチメートル幅で紐(ひも)状にはぎ取る。次にこれを挽(ひ)き具にかけて繊維をとる。マニラ麻は強靭(きょうじん)で、かつ水に浮くほど軽く、しかも水湿に対し耐久力が強いので、船舶用のロープの原料として重要で、また漁網や、特殊な織物にも用いられる。麻挽きの残り屑(くず)は製紙原料にもなる。
フィリピン原産で、フィリピンのほか、コスタリカなど中央アメリカでも大規模な栽培が行われている。
[星川清親 2019年6月18日]