ホスファン

化学辞典 第2版 「ホスファン」の解説

ホスファン
ホスファン
phosphane

リンの水素化物の体系名.【ホスフィン(phosphine):PH3.【ジホスファン(diphosphane):P2H4(65.98).旧名ジホスフィンともいわれた.PH3中で放電するか,リン化カルシウムCa3P2加水分解で生成する.H2P-PH2(ねじれ形構造).密度約1.01 g cm-3.P-P約2.22 Å,P-H約1.45 Å.∠H-P-H約91.3°.融点-99 ℃,沸点52 ℃.室温およびそれ以上では,不安定である.空気中で自然発火する.光でPH3と固体水素化リン (P2H)n になる.水で徐々に分解する.毒性が強い.[CAS 13445-50-6]【】ポリホスファン(polyphosphane):PxHy.水素化リン(phosphorus hydride)ともいう.P2H4の熱分解か,Ca3P2の加水分解で生成する.P-P結合をもつ環状または鎖状の多量体と考えられる.大部分は不安定で,室温でもしだいに分解する.【】オルガノホスファン(organophosphane):ホスフィンのH原子の全部または一部を炭化水素基で置換したもの.トリエチルホスファン,トリフェニルホスファン(トリフェニルホスフィン)などがある.有機合成用や重合促進剤などに用いられる.このほか,炭化水素骨格に-PR2基を複数導入した化合物は,金属錯体キレート配位子として重要なものが多い.たとえば,ビス(ジメチルホスフィノ)エタン(dmpe)(CH3)2PCH2CH2P(CH3)2や,ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)(C6H5)2PCH2CH2P(C6H5)2など.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報