ヘタイライ(英語表記)hetairai

改訂新版 世界大百科事典 「ヘタイライ」の意味・わかりやすい解説

ヘタイライ
hetairai

〈女友だち〉もしくは〈情婦〉の意味をもつ古代ギリシア語で,一般の売春婦(ポルナイpornai)と対比して,教養ある遊女を表すのに用いられた。ヘタイラ(単数形)は前7世紀頃からイオニア地方やギリシア本土に現れはじめ,古典期にはアテナイコリントスのような港町がそのヘタイラの数の多さと質の高さで有名であった。一方スパルタではヘタイラはみられなかった。音楽や踊りに熟練し,文学・芸術・哲学にもしばしば精通したヘタイラとの交際は,下品なこととはみなされず,妻女が姿をみせることのない宴席では彼女たちがホステスの役をつとめた。もっとも有名なヘタイラとしては,ペリクレスの愛妾であったアスパシア,人間として完ぺきな美しさをもち彫刻家プラクシテレスのために女神アフロディテのモデルとなったフリュネアレクサンドロス大王をそそのかしてペルセポリスを炎上させたと伝えられるタイスなどがあげられる。
売春
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のヘタイライの言及

【売春】より

…立法者ソロンはアテナイに初めて公共娼家を設けたと伝えられ,そこに属する売春婦たちは,それとわかる服装を強制され,他の街区への移動や宗教儀礼への参加を禁じられていたという。このほかギリシアには,厳密な意味での売春婦と規定するには微妙であるが,宴席での歌舞音曲をこととする女性たちや,ヘタイライの名で知られる階層があった。とくに後者の中からは,彫刻家プラクシテレスのモデルとなったフリュネ,政治家ペリクレスの寵を得て多くの芸術家に囲まれたアスパシア,実在は疑わしいがアレクサンドロスその他の王に愛され,キリスト教の聖女伝説にもその名を残すタイスなど,著名な女性が出ており,文化史上注目に値する。…

※「ヘタイライ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

排外主義

外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...

排外主義の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android