タイス(英語表記)Thais

翻訳|Thais

精選版 日本国語大辞典 「タイス」の意味・読み・例文・類語

タイス

(原題Thaïs) 長編小説。アナトール=フランス作。一八九〇年刊。四世紀頃の原始キリスト教時代のエジプト背景に、舞姫タイスを救おうとした修道僧パフニュスが、彼女魅力にひかれて、地上の恋を叫ぶに至る過程を描く。フランスの作曲家J=マスネーによってオペラ化された。

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デジタル大辞泉 「タイス」の意味・読み・例文・類語

タイス(〈フランス〉Thaïs)

アナトール=フランスの長編小説。1890年刊行。キリスト教の聖人伝題材に、肉と霊との相克そうこくを描く。舞姫タイス。
マスネーのオペラ。全3幕。1894年初演。に基づく。「タイスの瞑想曲」とよばれる間奏曲が有名。

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改訂新版 世界大百科事典 「タイス」の意味・わかりやすい解説

タイス
Thais

古代の伝説的な女性。アテナイ出身の遊女(ヘタイラ)で,アレクサンドロス大王の寵を得,王をそそのかしてペルセポリスを炎上させた。のちエジプト,プトレマイオス朝の祖ラゴスに嫁して7人の子をもうけたという。同名の女性はキリスト教の聖人伝の中にも見いだされ,次のような話が伝えられている。すなわち彼女は,4世紀ごろのアレクサンドリアの名高い遊女であったが,隠修士パフヌティウスの導きでキリスト教徒となった。そのおり豪華な衣装や宝石類を惜し気もなく公然と焼き捨てたという。3年の修徳生活を経て,修道女となりわずか14日で没したが,聖女,悔悛者として尊崇された。祝日は10月8日。おそらくこれはヘレニズム末期に成立していたタイス伝説のキリスト教的翻案と思われる。彼女の劇的な生涯は,後世しばしば作品化され,中世ドイツの女流詩人ロスウィータの戯曲のほか,近代ではA.フランスの歴史小説《タイス》(1889)やマスネーのオペラ《タイス》(初演1894)などがよく知られている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タイス」の意味・わかりやすい解説

タイス
Thais

前4世紀在世したギリシアアテネの高級娼婦。アレクサンドロス3世 (大王) の軍隊とともに,おそらく部将プトレマイオス (のちのプトレマイオス1世ソテル ) の愛人としてペルシアに行き,ペルセポリスに火をつけるよう酒席で大王にすすめたといわれるが,その真偽のほどは不明。また,タイスはしばしば高級娼婦の呼称としても使われた。

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デジタル大辞泉プラス 「タイス」の解説

タイス

フランスの作曲家ジュール・マスネのフランス語による全2幕のオペラ(1894)。原題《Thaïs》。アナトール・フランスの同名小説を題材とする。「タイスの瞑想曲」とよばれる間奏曲が有名。

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世界大百科事典(旧版)内のタイスの言及

【ヘタイライ】より

…音楽や踊りに熟練し,文学・芸術・哲学にもしばしば精通したヘタイラとの交際は,下品なこととはみなされず,妻女が姿をみせることのない宴席では彼女たちがホステスの役をつとめた。もっとも有名なヘタイラとしては,ペリクレスの愛妾であったアスパシア,人間として完ぺきな美しさをもち彫刻家プラクシテレスのために女神アフロディテのモデルとなったフリュネ,アレクサンドロス大王をそそのかしてペルセポリスを炎上させたと伝えられるタイスなどがあげられる。売春【篠崎 三男】。…

※「タイス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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