アスパシア(英語表記)Aspasia

改訂新版 世界大百科事典 「アスパシア」の意味・わかりやすい解説

アスパシア
Aspasia

ミレトス出身の才色兼備女性生没年不詳。前5世紀中ごろアテナイへ来て遊女ヘタイライ)として活躍。その才知によりソクラテスなど知識人をもひきつけた。ペリクレス最初の妻を離縁して他に嫁がせ,彼女を内縁の妻とした。前432年ごろ,ペリクレスの政敵により瀆神罪で訴えられたが,ペリクレス自身の弁護により放免された。先妻の生んだ息子が2人とも若死にしたため,彼女の生んだ息子ペリクレスが嫡子となった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アスパシア」の意味・わかりやすい解説

アスパシア
あすぱしあ
Aspasia

生没年不詳。ペリクレスの寵愛(ちょうあい)を受けたミレトス生まれの遊女で、紀元前5世紀ギリシアのもっとも有名な女性。ペリクレスはすでに2人の子があったが、正妻と離婚、法律上外国女性との結婚は正式には認められていなかったが、前445年ごろより生涯彼女と同棲(どうせい)し、男の子(小ペリクレス)を得た。のちに2人の嫡子を失うと、彼は自ら定めた法を破り、この1子を嫡子とした。女神ヘラに比せられた才色兼備の彼女は、ペリクレス周辺に出入りしたソクラテスなど当時の名士とも交際した。しかし、女性の地位の低かったアテネでは、こうした行動は政治的な反ペリクレスの動きと絡み、さまざまな反感を市民の間に引き起こしたらしい。ペリクレスの死(前429)後、民衆派の指導者リシクレスと結婚、彼が殺害された(前428)のちもアテネで余生を過ごした。

[真下英信]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アスパシア」の意味・わかりやすい解説

アスパシア
Aspasia

前5世紀頃のギリシアの女性。ミレトスで生れる。ペリクレスが妻と離婚したのち,前 445年頃からペリクレスが死ぬ前 429年まで愛人として同棲。小ペリクレスを生んだ。ソクラテスと談論する知的女性でもあったことは,プラトン対話篇などにも記されている。

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世界大百科事典(旧版)内のアスパシアの言及

【ヘタイライ】より

…音楽や踊りに熟練し,文学・芸術・哲学にもしばしば精通したヘタイラとの交際は,下品なこととはみなされず,妻女が姿をみせることのない宴席では彼女たちがホステスの役をつとめた。もっとも有名なヘタイラとしては,ペリクレスの愛妾であったアスパシア,人間として完ぺきな美しさをもち彫刻家プラクシテレスのために女神アフロディテのモデルとなったフリュネ,アレクサンドロス大王をそそのかしてペルセポリスを炎上させたと伝えられるタイスなどがあげられる。売春【篠崎 三男】。…

※「アスパシア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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