精選版 日本国語大辞典 「プランク」の意味・読み・例文・類語
プランク
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ドイツの理論物理学者。キールの生れ。1874年ミュンヘン大学に入学し,最初は数学を学ぶが,しだいに物理学に関心をもつようになった。1877-78年の冬および78年の夏ベルリン大学に遊学,H.L.F.vonヘルムホルツとG.R.キルヒホフの講義を聴講,またR.J.E.クラウジウスの論文に出会い,これを機縁に学位論文のテーマに熱力学第2法則に関する理論的問題を選んだ。プランクは第2法則の不可逆過程を自然的過程と呼んだが,第2法則に自然法則の絶対的なものを見いだしていたようである。キール大学教授を経て,89年キルヒホフの後任としてベルリン大学に招かれ助教授に就任,92年同教授,この間懸賞論文〈エネルギー保存の原理〉に挑戦する一方,希薄溶液の平衡(1887),解離と濃度の関係(1888),浸透圧の問題(1890)などの物理化学の諸結果を熱力学的に取り扱い,成果を収めた。
ところで,彼の名を冠たるものにした熱放射の理論的研究にプランクが初めて取り組んだのは95年のことであった。彼は熱放射を〈共鳴子〉(電磁的振動子に対してのプランクの呼名)による電磁波の放出・吸収という電磁的過程として考察した。だが,この考察からは不可逆性を導くことができず,L.ボルツマンの批判をうけた。そこでプランクは熱力学的考察から共鳴子の電磁エントロピーを考え,ウィーンの分布式(ウィーンの変位則)を導出することに成功した。ところが完全だと思われていたウィーンの公式が長波長領域において実験と異なることがH.ルーベンスらによって指摘され,プランクは再検討を余儀なくされた。1900年10月,内挿法によって実験と一致する新分布式(プランクの放射則)を発表,その後ボルツマンの熱力学の原子論的解釈に従ってエントロピーを検討し,エネルギー要素ε=hν(hはプランク定数,νは振動数)という概念を導入,共鳴子の放射の吸収・放出は,このエネルギー要素の整数倍でしか起こらないとする量子仮説によって新分布式を理論的に基礎づけ,同年12月,これを発表した。プランクの成功は,電気的な実験測定手段の新段階に負うた実験的結果を踏まえ,熱放射固有の実在から規定される原理(分布則)に対して,理論的に基礎づけるにふさわしい方法を意識的に追求していったところにある。エネルギー要素の仮説は量子論研究の口火を切るものであった。しかし,当のプランクはその後この画期的仮説を古典物理学の枠内で解釈しようとし,アインシュタインの特殊相対性理論の重要性を即座に認めたものの,エネルギー要素の本質的な意味を明らかにした光量子仮説に対しては疑いの目を向けた。また,マッハの実証主義的傾向に対しては実在の存在を認める立場から批判し,量子力学の正当な〈コペンハーゲン解釈〉も決定論の立場から拒否した。
1912年プロイセン科学アカデミー常任理事,13-14年ベルリン大学学長,30-37年カイザー・ウィルヘルム協会(のちのマックス・プランク協会)会長職を務めるなど,ドイツ科学の興隆のため中心的存在として活躍した。1918年ノーベル物理学賞を受賞。
プランクが良心的立場からナチズムに一線を画したことはよく知られている。反ユダヤ主義のためにアインシュタインが非難・追放されたときにはナチのやり方に遺憾を表明し(1933),またF.ハーバーを擁護するためにヒトラーと直接会見もしている。プランクは輝かしい伝統をもつドイツ科学の基本原則を守り,科学研究における自由と学識を尊重した。W.K.ハイゼンベルクがナチスへの抗議として大学を辞職しようとしたときには,ドイツ科学の将来を背負う若人のために大学にとどまるように説いたといわれる。なお総理府事務次官を務めていた息子エルビンは,ヒトラー暗殺未遂事件に関与したとの嫌疑で45年処刑された。
執筆者:兵藤 友博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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ドイツの理論物理学者.ミュンヘン大学,ベルリン大学では数学や物理学を学び,熱力学第二法則に関する論文によってミュンヘン大学から学位を取得.1880年同大学の講師になり,キール大学員外教授を経て,1889年ベルリン大学に着任,1892年に教授になり,1926年までその地位にあった.不均質系の平衡,浸透圧,電離などの熱力学的考察にはじまり,熱放射の熱力学的および電磁気学的な本性の研究に進み,古典物理学では熱放射の測定データの理解が困難であることから,エネルギーの離散性の仮説(量子仮説)をもとに正しい熱放射波長分布法則を導き(プランク定数の発見),量子論,量子力学への道をひらいた.かれはA. Einstein(アインシュタイン)の特殊相対論の意義をただちに認め,1913年Einsteinをベルリン大学の教授に招いた.1912年プロイセン科学アカデミー会長,1930年カイザー・ウィルヘルム科学協会会長などの要職を歴任し,ドイツの学界を指導した.エネルギー量子の発見により,1918年ノーベル物理学賞を受賞.カイザー・ウィルヘルム協会は,1948年にかれの功績を讃えてマックス・プランク協会として改称して再建された.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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(二間瀬敏史 東北大学大学院理学研究科教授 / 2007年)
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1858~1947
ドイツの理論物理学者。熱輻射(ふくしゃ)の研究によって「プランクの輻射公式」を立て,その理論的根拠として作用量子の仮説を導入し,初めて輻射エネルギーの不連続性を論じた(1900年)。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…つまりエントロピーは微視的物理量ではなく,巨視的物理量だというのである。
[ボルツマン=プランクの方法]
1877年,ボルツマンは第2法則の確率論的基礎付けを追う途上で,以下に述べるような熱平衡状態のまったく独特な決定法を発見した。非常に多数の微視的状態は巨視的物理量で指定される同一の巨視的状態に見えるが,巨視的状態によって対応する微視的状態の個数が異なり,熱平衡状態に対応する個数は非平衡状態に対応するものに比べ圧倒的に大きい。…
…現在では光速度の値として, c0=2.99792458(1.2)×108m/sが得られているが((1.2)は下端の桁の誤差),これは一つのレーザーの発する光の波長λ0と振動数νとを測定し,c0=λ0νなる関係を使って求められたものである。 さて,光は波動であるが,その振動数をν,真空中の波長をλ0としたとき,物質との相互作用の際に,E=hνのエネルギーと,向きが光の進行方向で大きさがp=h/λ0の運動量をもつ粒子としてふるまい(hはプランク定数),この粒子をフォトン(光子)と呼ぶ。
【波動としての光】
光学の歴史は古く,古代ギリシアのユークリッド(エウクレイデス)は光が直進することや反射の法則について記述を残しているが,光学が近代的学問としての装いを整えるようになるのはさまざまな光学器械が登場する16世紀以降のことであり,また,これに伴って,光の本性をめぐっての論争も活発化する。…
… ブラウン運動の理論はさらに,確率過程の例題として,より美しい数学的形式にみがき上げられていく。ポーランドのM.vonスモルコフスキー,ドイツのフォッカーAdriaan Daniël FokkerおよびM.プランク,フランスのP.ランジュバンによって発展され,さらにのちにはN.ウィーナーにより確率過程の数学の一部門にもなっていく。フォッカー=プランクの方程式は微粒子の位置と速度の確率分布関数がみたすべき方程式であり,ランジュバン方程式は微粒子の運動方程式で,速度の減衰項や外力(重力)のほかに,ランダム・ノイズとしてのゆらぐ力を含んでいる。…
…協会は独自の基金を有し,特許収入のほか寄付金も寄せられるが,予算の大半は連邦政府および諸州政府によってまかなわれている。 マックス・プランク協会の前身は,ベルリン大学創立100年を記念して,1911年に設立されたカイザー・ウィルヘルム協会Kaiser Wilhelm‐Gesellschaft zur Förderung der Wissenschaften(以下KWGと略記)である。KWGの設立にあたっては,研究者を教育義務から解放し,学問研究に専念できるような施設をつくるべきだという神学者A.vonハルナックの提案があずかって力があった。…
…こうしたψの固有振動は,それぞれ量子力学的粒子のエネルギー確定の運動を表し,それをしている粒子は定常状態にあるといわれる。定常状態のエネルギーはそれぞれの振動数にプランク定数hをかけたhν0,hν1,……であたえられ,系のエネルギー準位とよばれる。たとえば水素原子の電子のエネルギー準位は-13.6eV/n2と書ける(n=1,2,……)。…
※「プランク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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