フライ(Christopher Fry)(読み)ふらい(英語表記)Christopher Fry

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

フライ(Christopher Fry)
ふらい
Christopher Fry
(1907―2005)

イギリスの劇作家。港市ブリストルに生まれる。学生時代から詩や韻文劇を書き、卒業後、地方劇団に属して演技、演出から作詞作曲まで受け持った。こういう職業的訓練が、少年時代のクェーカー的教育とともに、後の作品に影響を与えている。少数習作を経て書いた喜劇不死鳥はまたも』(1946)は、デビュー作として好評を博したばかりでなく、第二次世界大戦後の詩劇流行のきっかけをつくった。作品はほとんど詩劇形式の喜劇で、代表作の「季節喜劇」四部作は、『焚刑(ふんけい)をまぬかれた女』(1948)が春、『観測されたビーナス』(1950)が秋、『闇(やみ)も明るく』(1954)が冬、『太陽の庭』(1970)が夏というように、それぞれの季節の雰囲気で光景、性格を統一している点に特徴がある。イギリス詩劇に喜劇的要素を復活させ、1950年代に反既成演劇の爆発があるまで、戦後イギリス演劇の主流の座を静かに守り続けたのがフライであった。

[中野里皓史]

『D・スタンフォード著、小津次郎訳『クリストファ・フライ』(1956・研究社出版)』

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