フッ化ケイ素(読み)フッカケイソ

化学辞典 第2版 「フッ化ケイ素」の解説

フッ化ケイ素
フッカケイソ
silicon fluoride

SinF2n+2族の総称.通常,四フッ化ケイ素をさす.ほかに六フッ化二ケイ素Si2F6が知られ,さらにSiが多数結合した同族体もある.【】四フッ化ケイ素:SiF4(104.08).ヘキサフルオロケイ酸バリウムを加熱分解すると得られる.

     Ba[SiF6] → BaF2 + SiF4

また,蛍石石英砂の混合物を硫酸と温めると生じる.

     CaF2 + H2SO4 → 2HF + CaSO4

     4HF + SiO2 → SiF4 + 2H2O

無色で刺激臭のある気体.正四面体構造.原子間距離Si-F 0.156 nm.融点-90.2 ℃,沸点-86 ℃.乾いた状態では安定であるが,水分があると分解してヘキサフルオロケイ酸とコロイドケイ酸を生じる.有機ケイ素化合物の合成原料,光ファイバーの製造,半導体集積回路エッチングなどに用いられる.[CAS 7783-61-1]【】六フッ化二ケイ素:Si2F6(170.16).低温でケイ素とフッ素反応させて得られる.無色の気体.融点-18.7 ℃,沸点-18.5 ℃.水と反応して分解する.低圧常温においてプラズマ中でケイ素とフッ素の反応によりSiFnを生じる反応は,半導体集積回路のエッチングに利用されている.[CAS 16961-83-4:H2SiF6]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フッ化ケイ素」の意味・わかりやすい解説

フッ化ケイ素
ふっかけいそ
silicon fluoride

ケイ素とフッ素の化合物。四フッ化ケイ素SiF4、二フッ化ケイ素SiF2、六フッ化二ケイ素Si2F6などが知られる。四フッ化ケイ素は、ケイ素にフッ素を直接作用させるか、二酸化ケイ素、ケイ酸塩にフッ化水素酸を作用させて得られる。蛍石(ほたるいし)CaF2と二酸化ケイ素の混合物に濃硫酸を作用させてもよい。純粋なものはヘキサフルオロケイ酸バリウムBaSiF6の熱分解によって得られる。無色、刺激臭の強い不燃性の気体。SiF4分子はケイ素原子を中心とする正四面体構造。吸湿性が強く、空気中では発煙する。水と激しく反応して二酸化ケイ素とヘキサフルオロケイ酸(フッ化ケイ素酸)を生じる。湿気がまったくなければ、ガラス、水銀グリースなどを侵さない。皮膚、粘膜などに激しい刺激を与え、毒性が強い。

 二フッ化ケイ素はSiF4とケイ素を反応させて得られる無色の気体。きわめて不安定。

 六フッ化二ケイ素は、六塩化二ケイ素をフッ化亜鉛と熱するか、ケイ素に不活性気体で薄めたフッ素を低温で反応させて得られる無色の気体。

[守永健一・中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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