フッ化ウラン(読み)フッカウラン

化学辞典 第2版 「フッ化ウラン」の解説

フッ化ウラン
フッカウラン
uranium fluoride

三,四,五および六価のウランのフッ化物が知られている.【】フッ化ウラン(Ⅲ):UF3(295.0).三フッ化ウランともいう.水素アルミニウム,ウランなどを用いて高温でフッ化ウラン(Ⅳ)を還元すると得られる.赤紫色の六方晶系結晶.融点1427 ℃.1000 ℃ 以上で徐々に分解する.水に不溶,冷たい酸には徐々に溶け,熱硝酸に易溶.高温では金属ウランとフッ化ウラン(Ⅳ)に分解する.[CAS 13775-06-9]【】フッ化ウラン(Ⅳ):UF4(314.0).四フッ化ウランともいう.
(1)酸化ウラン(Ⅳ)にフッ化水素を作用させる,
(2)フッ化ウラニルをフッ化水素存在下塩化スズ(Ⅱ)で還元する,
(3)酸化ウラン(Ⅵ)をフレオンで還元する,
などにより得られる.緑色,吸湿性の単斜晶系結晶.1100 ℃ 以上で分解する.水に不溶.酸化力のある酸に溶解しウラニルイオンを生じる.フッ素と250 ℃ で反応しフッ化ウラン(Ⅵ)を生成する.[CAS 10049-14-6]【】フッ化ウラン(Ⅵ):UF6(352.0).六フッ化ウランともいう.フッ化ウラン(Ⅳ),酸化ウラン(Ⅳ),ウラン金属などとフッ素とを反応させると得られる.工業的にはUF4にフッ素を反応させる.無色の斜方晶系結晶.三重点は64.01 ℃(1517 hPa).常温では固相-気相平衡状態にあり,18 ℃ における蒸気圧は約130 hPa.たやすく揮発させることのできる唯一のウラン化合物で,ウラン同位体の分離に利用される.容易に加水分解して,フッ化ウラニルとフッ化水素を生じる.水素と常温で反応し,フッ化ウラン(Ⅳ)とフッ化水素を生成し,またリン,ヒ素炭素なども還元剤として作用し,フッ化ウラン(Ⅳ)を生成する.水銀ナトリウムなどの金属と常温で反応する.通常の有機溶媒と反応する.[CAS 7783-81-5]【】そのほか,UF5,U2F9,U4F17などの中間のフッ化物が知られており,これらはフッ化ウラン(Ⅳ)とフッ化ウラン(Ⅵ)との反応,そのほかによってつくられる.これらのフッ化物は,きわめて容易に不均化する.たとえば,

3UF5 U2F9 + UF6

である.[CAS 13775-07-0:UF5][CAS 12134-48-4:U2F9]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報