フジクジラ(読み)ふじくじら(英語表記)blackbelly lanternshark

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フジクジラ」の意味・わかりやすい解説

フジクジラ
ふじくじら / 藤鯨
blackbelly lanternshark
[学] Etmopterus lucifer

軟骨魚綱ツノザメ目カラスザメカラスザメ属Etmopterusの1種の名称。臀(しり)びれがなく、背びれに強い棘(とげ)があること、上顎歯(じょうがくし)は数尖頭(せんとう)の直立歯で、下顎歯は単尖頭(枝分かれしていない)で外方に傾き、隣の歯と連続すること、体が黒色で鱗(うろこ)が線状に並ぶことなどが特徴。体の腹面はとくに黒く、この部分に発光器がある。生殖方法は卵黄依存型の胎生であるが、詳しいことは不明である。全長約15センチメートルで産まれ、50センチメートルほどになる。南日本、フィリピン、オーストラリア南部、ニュージーランドなどの海域黄海東シナ海、南シナ海に分布し、水深158~1357メートルから記録がある。日本近海には、カラスザメなどいくつかの近縁種がいる。国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、低懸念(LC)とされている(2021年9月時点)。

[仲谷一宏 2021年10月20日]

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改訂新版 世界大百科事典 「フジクジラ」の意味・わかりやすい解説

フジクジラ
Etmopterus lucifer

軟骨魚綱ツノザメ目ツノザメ科の海産魚。クジラの名の由来は不明だが,フジは生時の体色(藤色)に関係するのだろう。死後は一様に黒くなるので,地方によってはカラス,クロンボ,クロツノコなどという。日本近海にはカラスザメ属は8種分布するが,フジクジラはもっとも分布域が広く,東北地方以南の日本各地,台湾,ニュージーランド,南アフリカ,南西アフリカ,ウルグアイ沖などからも報告されている。全長50cmにしかならない。両背びれの起部前縁にとげがあり,上顎(じようがく)歯は1尖頭だが下顎歯は3~5尖頭あり,剛毛状のうろこが体軸と平行して走り多数の隆起線を形成するのが特徴。体は生時は金属的な光沢を帯びる紫黒色だが,死後は一様に黒くなる。水深150~700mくらいの深海にすみ,発光器をもつ。卵胎生で1産10尾ほどの子どもを産む。イカ類を主食とするが,ハダカイワシなどの魚類も食べる。ほとんど利用されない。
サメ
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