ハナアマダイ(読み)はなあまだい(英語表記)Okinawan tilefish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナアマダイ」の意味・わかりやすい解説

ハナアマダイ
はなあまだい / 花甘鯛
Okinawan tilefish
[学] Branchiostegus okinawaensis

硬骨魚綱スズキ目アマダイ科に属する海水魚。沖縄本島近海からのみ知られている。体はやや細長くて、側扁(そくへん)する。体長は体高の3.4~3.7倍。頭は大きく、頭長は体高よりすこし長い。頭部の外郭は目の前縁で鋭く曲がり、吻端(ふんたん)までほとんど垂直。目は頭部の外郭に近接する。目は大きく、眼径は両眼間隔幅よりも大きく、眼下幅におよそ等しいか、より長い。上下両顎(りょうがく)はやや斜めで、上顎の後端は瞳孔(どうこう)の中央部に達するか、わずかに越える。上下両顎歯は外列の犬歯状歯とその内側の絨毛(じゅうもう)状の歯帯からなり、犬歯状歯は上顎には17~22本、下顎には8~12本ある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨には歯がない。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後縁は鋸歯(きょし)状。鰓耙(さいは)は上枝に6~7本、下枝に12~14本。鱗(うろこ)は大きく、櫛鱗(しつりん)。頬(ほお)には皮下に埋没しないで明瞭(めいりょう)な5~6列の鱗があり、中央部の2列はその周辺の鱗より大きい。側線鱗数は46~51枚。背びれと臀(しり)びれは棘(きょく)部と軟条部の間に欠刻(切れ込み)がない。背びれは7棘15軟条で第1棘がもっとも短く、後方に向かって長くなり、第13軟条がもっとも長い。臀びれは2棘11~12軟条。体は側線から上方の背側面は赤桃色で、その下方は銀色。背びれ前方の背正中線上には黒色線がない。目の背縁は緑黄色で、腹縁は黄色みを帯びる。背びれの鰭膜(きまく)はその基底が黄色で、第1~第3棘の間に長方形の暗黄色の斑紋(はんもん)をもつ。胸びれの上半分は黄色みを帯びる。尾びれの上半分は黄色、下半分は緑灰色で、尾びれの基底部中央から尾びれの後縁まで2本の黄色線が走る。体長は30センチメートルあまりになる。水深100~200メートルの砂泥底にすみ、釣りによって漁獲される。生態はよくわかっていない。

 本種は2012年(平成24)に那覇の魚市場で採集された9個体の標本に基づいて、魚類学者の平松亘(ひらまつわたる)(1953― )、吉野哲夫(よしのてつお)(1945― )によって新種として記載された。アマダイ科魚類は日本から5種が知られているが、本種は背びれの前方の背中線状に黒線がないこと、背びれの前端に暗黄色斑があること、頬上の2列の鱗は周辺の鱗より大きいことなどの特徴で他種と区別できる。

[尼岡邦夫 2023年5月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例