ドーバー(イギリス)(読み)どーばー(英語表記)Dover

翻訳|Dover

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドーバー(イギリス)」の意味・わかりやすい解説

ドーバー(イギリス)
どーばー
Dover

イギリス、イングランド南東端、ケント県の港湾都市。人口10万4490(2001)。ドーバー海峡の最狭部に臨み、ローマ時代から大陸との交通上、また戦略上重要な港町であった。対岸にあるフランスの港湾都市カレーとの間は約34キロメートルにすぎず、連絡船が就航。ほかにフランスのダンケルク、ブローニュ・シュル・メール、ベルギーオーステンデとの間にも連絡船があり、大陸からの玄関口の役割を果たしている。港は商港であるとともに軍港機能をあわせもつ。また、付近のフォークストンから英仏海峡トンネル(ユーロトンネル)がフランスに通じている。白亜紀の海食崖(がい)の上に12世紀築造のドーバー城があり、町は海浜保養地、観光都市ともなっている。

[久保田武]

歴史

この地にはローマ人の侵入以前に人が住んでいたといわれるが、ローマの属領時代にはドゥブリスDubrisの名でブリテン島と大陸の間の交通の要衝として認められ、ゲルマン民族の移動に備えて砦(とりで)がつくられた。11世紀のノルマン人征服に際して、ドーバーはサクソン時代よりすでに自治邑(ゆう)であったと主張したため、ウィリアム1世は海岸防衛の義務と引き換えに、独立の司法権を認めた。以後ドーバー城の整備も進み、1278年にはイングランド南東部の特別港たる「シンク・ポーツcinque ports(五港)」の一つとして、ヘースティングズハイズ、ラムニーとともに自治の特許状を授けられた。その後も大陸への出入口として主要な地位を占め続けたが、15世紀になると海上防衛の拠点としての独占的な地位は失われた。第二次世界大戦中には砲撃爆撃を被り、市街は被害を受けた。

[今井 宏]

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