トランシット
とらんしっと
transit
角測量(角度測定)のためのもっとも一般的な測量器械の一つでセオドライトtheodolite、経緯儀ともいう。元来、天文測量において、天体が子午線を通過する時刻(トランシット)を観測するのに使われたのが名前の起源で、経緯儀という用語も同様の起源である。水平に置いた目盛り分度盤の中心に垂直軸を立て、その周りに自由に回転できるよう望遠鏡を取り付けたもので、これはまた鉛直面内でも自由に回転できるようになっている。水平角だけを観測できるものはセオドライトといって区別したが、最近ではほとんどが高度角も観測できるトランシットが使われ、一級と二級の規格がある。目盛り盤の刻みの角度の単位は、日本やアメリカでは度分秒方式をとっているが、ヨーロッパでは百進法によるグラード単位を採用している国が多い。
[尾崎幸男 2016年11月18日]
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トランシット
transit
望遠鏡と目盛り盤を備えた精密な測角器械。三角測量や多角測量など地上測量で使う。水平角観測の測角器械をセオドライトといったが,現在は精度の高いトランシットをさすようになった。しかし両者の区別ははっきりしていない。望遠鏡,水平目盛り盤,鉛直目盛り盤などから成る測角のための上部構造と,器械を三脚で地上に水平に固定する整準のための整準ねじや平行盤などの下部構造から成る。望遠鏡は水平軸と垂直軸でそれぞれ 360度回転できるようになっており,水平目盛り盤で水平角,鉛直目盛り盤で高低角を読取れる。トランシットの精度から,1級は1秒読み,2級は6~12秒読み,3級は 20~30秒読み,4級はそれ以下となっている。
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トランシット
〘名〙 (transit) 測量用機器の一種。水準器と望遠鏡を組み合わせて水平角、鉛直角を測定するもの。
転鏡儀。経緯儀。
※春と修羅第二集補遺‐若き耕地課投手の Iris に対するレシタティヴ(1924頃)〈宮沢賢治〉「尖ったトランシットだの だんだらのポールをもって 古期北上と記元を競ひ」
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「トランシット」の意味・わかりやすい解説
トランシット
測量機器の一つ。測量や天体観測に用いられる光学器械。目標点の高度,水平角を測定する。水平,鉛直の2面内を動く小望遠鏡と目盛盤とからなり,目盛はバーニヤまたは指標で読みとる。目盛を光学的拡大装置で読みとるものは,セオドライトと呼ばれる。
→関連項目経緯儀|鉱山測量
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デジタル大辞泉
「トランシット」の意味・読み・例文・類語
トランシット(transit)
測角器の一。主として水平角・高低角の測定に使用。水平分度盤と鉛直分度盤をもつ架台上に、自由に回転できる望遠鏡を取り付けたもの。精密なものを経緯儀という。転鏡儀。セオドライト。
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世界大百科事典内のトランシットの言及
【経緯儀】より
…測地測量,一般測量,あるいは天体観測に使用される光学器械の一種で,目標点の水平角および高度を測定するための装置。一般にトランシットtransitと呼ばれる。目標点を視準する小型望遠鏡を,鉛直,水平の2軸方式で目的の方向に向けることができ,その方向を水平目盛盤,鉛直目盛盤で読み取る構造になっている。…
【測量】より
…経緯儀は重力またはこれに垂直の方向を基準として整準し,この状態で付属望遠鏡を2点以上の目標に向け,その間の水平角を,また各点の鉛直角(高度角)を目盛盤上で読みとるものである。日本工業規格(JIS)では,目盛盤をバーニヤまたは指標で読みとるものをトランシットtransitといい,光学的な拡大装置を用いて読みとるものをセオドライトといって区別している。経緯儀の構造は,望遠鏡,水平軸,鉛直軸,鉛直目盛盤,気泡管等から構成される,鉛直軸に直角についている上板から上の上部機構と,鉛直軸,水平目盛盤,整準・求心装置等の下部機構から成り立っている。…
※「トランシット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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