日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
トムソン(Sir Charles Wyville Thomson)
とむそん
Sir Charles Wyville Thomson
(1830―1882)
イギリスの博物学者、エジンバラ大学教授、チャレンジャー号世界周航探検の科学隊長。スコットランドのボンサイドに生まれ、エジンバラ大学で医学を学ぶ。1868年にライトニング号、1869年にポーキュパイン号で、深海の生物調査に従事し、深海にそれまで信じられていたような無生物層はなく、表層から深層(650ファゾム=約1200メートル)まで生物がすんでいることを明らかにした。1872年から1876年までは、チャレンジャー号の大探検に科学隊長として乗り組み、海洋生物のみならず海底、海水の性状、測温などの本格的な観測調査を行い、同号の探検を成功させた。また試料の整理や50巻に及ぶ『チャレンジャー報告』の編集に努力したが、完成をみずに死去した。この事業はJ・マレーによって引き継がれた。トムソンの名を冠したワイビル・トムソン海嶺(かいれい)は北大西洋の北緯60度、西経7.5度付近に東西に連なるもので、北側と南側で生物相が異なることで知られる。おもな著書に『The Voyage of the Challenger』(1877)、『The Depths of the Sea』(1873)がある。
[半澤正男]