トゥレーヌ(フランス)(読み)とぅれーぬ(英語表記)Touraine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゥレーヌ(フランス)」の意味・わかりやすい解説

トゥレーヌ(フランス)
とぅれーぬ
Touraine

フランス中西部の歴史的地方名、旧州名。主として現在のアンドル・エ・ロアール県の範囲に相当し、アンドル、ビエンヌ、ロアール・エ・シェル三県の一部を含む。「フランスの庭」と称される風光明媚(めいび)の地で、丘陵や多数の河谷が織りなす緩やかな起伏がある。ほぼ東西に横切るロアール川と、その支流のシェル川、アンドル川ビエンヌ川、クルーズ川が、この地方をいくつかの特色ある地域に分断している。ローマ時代にはガリアの一部族トゥロネスTurones人が居住し、これが名称の由来である。野菜、果実、花卉(かき)などの農業が主産業。商工業は川の流域に発達し、中心都市トゥール周辺部に集積する。10世紀には、ブロア、アンジュー両伯の係争地となり、フィリップ2世(在位1180~1223)治世下にフランス王領に併合された。美しい風光がフランス諸王の関心をひき、16世紀には彼らの別荘が多く建てられた。それらの華麗な城が多く残り、アンボアーズ城、ランジェ城、ユッセ城ロシュ城、アゼ・ル・リドー城、シュノンソー城などがその代表的なものである。温暖な気候と相まって、フランス有数の観光地帯となっている。

[高橋伸夫]

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