ティンバーゲン(Jan Tinbergen)(読み)てぃんばーげん(英語表記)Jan Tinbergen

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ティンバーゲン(Jan Tinbergen)
てぃんばーげん
Jan Tinbergen
(1903―1994)

オランダの経済学者。オランダ語読みではティンベルヘンハーグに生まれ、ライデン大学物理学科を卒業。物理学者としての将来をアインシュタインに期待されたが、1933年にロッテルダム経済大学の講師となる。36~38年、国際連盟景気循環研究委員。当時の学問的成果『景気循環問題への計量経済学的接近』An Econometric Approach in Business Cycle Problems(1937)、『アメリカ合衆国における1919―32年の景気循環』Business Cycle in the United States of America1919―1932(1939)の二著は世界における計量経済学のパイオニア的労作として不朽名著となったが、経済理論を統計的に実証したこの画期的試みをケインズは「錬金術」と評した。反ナチス抵抗運動を経て、第二次世界大戦後の45~55年オランダ中央経済計画局長官を務める。社会党経済政策の指導者でもあり、これらの実際経験と計量経済学とを結び付けた成果として、『計量経済学』Econometrics(1951)、『経済政策の理論』On the Theory of Economic Policy(1955)、『経済政策――原理と計画』Economic Policy : Principles and Design(1956)などがある。とくに最後のものは、因果モデルを逆転して、目的を外生、政策手段を内生とする真の政策モデルであり、線形連立方程式型のモデルは世界各国で使用されているが、その創始者ティンバーゲンであることは意外に知られていない。発展途上国開発問題についての代表作には『経済開発設計』The Design of Development(1958)がある。また、68~73年、国連開発計画委員会委員長を務め、70年1月には『第二次国連開発の10年のための指針と提案』(いわゆる「ティンバーゲン報告」)を発表した。69年R・フリッシュとともに最初のノーベル経済学賞を受けた。なお、73年にノーベル医学生理学賞を受賞した動物行動学者ニコラス・ティンバーゲンは実弟である。

尾上久雄

『錦織理一郎・鈴木啓裕訳『計量経済学』(1961・政文堂)』『気賀健三・加藤寛訳『経済政策の理論』(1956・巌松堂書店)』『尾上久雄訳『経済開発の設計』(1985・有斐閣)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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