タテ社会(読み)たてしゃかい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タテ社会」の意味・わかりやすい解説

タテ社会
たてしゃかい

文化人類学者中根千枝(ちえ)(1926―2021)の『タテ社会の人間関係』(1967)、『タテ社会の力学』(1978)の書名に用いられた語。中根によれば、日本人の集団への参加は、個人の「資格」よりもその置かれた「場」に基づいており、集団自体も、個人特質の共通性よりも枠の共有性によって構成される。各自の「資格」に応じて複数の集団に所属できる場合と違い、「場」から離脱すれば成員でなくなる日本の社会では、単一集団への一方的帰属が求められる。そこでは相異なる「資格」者が含まれるから、成員間にタテの関係(上役・下役、親分子分先輩後輩)が発達するはずだという。儀礼的序列関係が重んじられる社会をさしている。

[濱口恵俊]

『中根千枝著『タテ社会の人間関係』『タテ社会の力学』(講談社現代新書)』

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世界大百科事典(旧版)内のタテ社会の言及

【日本社会論】より

近代化
【社会構造】
 日本の社会構造を,社会的活動や社会関係のパターン,もしくはそれらを規制する規範的原理に関して分析し,日本社会の基本的な構成原理を探る試みがなされている。たとえば,社会人類学者,中根千枝の〈タテ社会〉論がそうである。
[〈タテ社会〉の構造]
 中根の説によれば,日本人の集団参加の基準は,個人の保有する〈資格〉よりも当人の属する〈場〉にウェイトがおかれる。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」