改訂新版 世界大百科事典 「セッケイカワゲラ」の意味・わかりやすい解説
セッケイカワゲラ
Eocapnia nivalis
カワゲラ目クロカワゲラ科の昆虫。雪上で生活する体長約10mm,黒色無翅のカワゲラで,古くから登山者によってセッケイムシ(雪渓虫)の名で親しまれている。一般に1月から早春にかけて雪上に見られ,とくに晴れた日の早朝に見られることが多い。本州中北部の高山では,雪渓上や残雪上に夏季でも見られることがある。幼虫は渓流に生息するが,その生活史についてはほとんど知られていない。本州に広く分布するが,北陸地方など中部地方以北に多い。本種は雪上をでたらめに行動するように見えるが,雪上の移動には太陽コンパスを使っていることが最近実験的に明らかにされた。日本には本種のほかに近似種2種および近縁のやはり無翅黒色のセッケイカワゲラモドキ属が5種知られている。とくにあとの属のものはヒマラヤ地方にも分布しており,エベレストより報告された種は卵胎生である。日本からはまだこのような報告はない。
→カワゲラ
執筆者:川合 禎次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報