日本大百科全書(ニッポニカ) 「スーダン(地域名)」の意味・わかりやすい解説
スーダン(地域名)
すーだん
Sudan
アフリカ大陸のサハラ砂漠以南、コンゴ盆地以北をさす地域名。スーダンとは、アラビア語で黒を意味するスーダSūdaに由来し、黒人の住む国という意味である。したがって、本来はサハラ砂漠以南の黒アフリカ全体をさすはずであるが、実際には、中東や北アフリカのアラブ人が交易などで接したサハラ砂漠南縁の黒人の住む地域の総称である。サハラ砂漠南限から幅約700キロメートルで東西に連なる帯状の地域と考えてよく、現在の国々ではモーリタニア、セネガル、マリ、ブルキナ・ファソ、ニジェール、チャド、それに「黒人の国」をそのまま国名としたスーダンと南スーダンが含まれる。近年では、サハラに沿った地域という意味のサヘル地方という呼称がよく使用される。
気候は北部が砂漠気候とステップ気候、南部がサバナ気候となっており、いずれも雨が少なく降水量は不安定である。遊牧や放畜、穀物、綿花、ラッカセイ、サトウキビなどを栽培する農耕が行われるが、近年人口増加などを原因とした砂漠化が進行しており、1970年代以後の大干魃(かんばつ)の際には住民や家畜に大きな被害を生じた。古くから北アフリカとの交易の最前線にあり、多くの都市や国家が栄えた。ヨーロッパ諸国による植民地支配で人為的な国境が引かれ、独立後もその国境を保ち、チャドのようにアラブ人系と黒人系との国内紛争が続く国もある。資源がなく内陸部に位置し、乾燥気候という条件から、貧しい国が多い。
[藤井宏志]