サンタ・クローチェ聖堂(読み)さんたくろーちぇせいどう(英語表記)Basilica di Santa Croce

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンタ・クローチェ聖堂」の意味・わかりやすい解説

サンタ・クローチェ聖堂
さんたくろーちぇせいどう
Basilica di Santa Croce

フィレンツェにあるフランチェスコ僧会所属のゴシック式聖堂。現在の建物は1224年にフランチェスコ僧会の修道士建築家たちによって建立された小聖堂を改築、拡張したもので、1294年に起工、1385年に完成した。1443年に行われた献堂式には教皇エウゲニウス4世が臨席している。設計者はアルノルフォ・ディ・カンビオとされるが、簡明で雄大な外観効果(19世紀に施工されたファサードは除く)と堂内の合理的な空間構成は、優れた彫刻家でもあったこの建築家にふさわしい成果といえる。依然としてバシリカ式の木組み天井が用いられているが、尖頭(せんとう)アーチを支える積柱列が形づくる三廊式の簡潔さは、後のブルネレスキによる聖堂の内部構成を予想させる。聖堂自体がもっとも優れたイタリア・ゴシック建築であるが、堂内を装う14世紀以降の彫刻・絵画にも美術史上貴重視される作品が少なくない。なかでも中世末期の大画家ジョットの円熟境地を示す『聖フランチェスコ物語』(バルディ家礼拝堂)と『洗礼者聖ヨハネ物語』(ペルッツィ家礼拝堂)、ドナテッロ浮彫り聖告』と木彫『キリスト十字架像』が有名である。また付属僧院中庭にあるパッツィ家礼拝堂はブルネレスキの設計で、初期ルネサンス建築のもっとも典型的な作例とされている。

[濱谷勝也]


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