中庭(読み)なかにわ

精選版 日本国語大辞典 「中庭」の意味・読み・例文・類語

なか‐にわ ‥には【中庭】

〘名〙 やしきの中の、建物と建物の間にある庭。家と家との中間にある庭。また、商家などで、店の土間を通り過ぎて中戸を入った所に設けてある小庭。坪。
※歌林四季物語(1686)七「今宵より中庭しきまうけ」

ちゅう‐てい【中庭】

〘名〙 なかにわ。庭中
菅家文草(900頃)五・松「孤松呈勁節、幸許在中庭」 〔孟子‐離婁下〕

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デジタル大辞泉 「中庭」の意味・読み・例文・類語

なか‐にわ〔‐には〕【中庭】

建物と建物の間につくった庭。周囲に建物のある庭。
[類語]庭園ガーデン名園林泉庭先外庭内庭坪庭前庭まえにわ前庭ぜんてい裏庭石庭箱庭御苑神苑内苑外苑花園梅園花壇前栽築山

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中庭」の意味・わかりやすい解説

中庭
なかにわ

一つの建物の中に取り込んで設けられた庭で、建物に囲まれているのが特色。

 地中海沿岸の国々をはじめ乾燥した地域では中庭を設けるのが普通である。パティオとよばれるスペインの中庭式庭園はその代表で、建築様式から中庭即主庭の性格をもっている。噴水のある水盤、カナール水路)、池などの水景施設を設けたり、花鉢や観葉植物で飾ったりする。また、すこし広い庭では、花の美しい低木や草花による花壇が設けられていたりして、水景施設とともにオアシス的空間を形成している。

 日本では平安時代中期の寝殿造風の邸宅において、建物や廊に囲まれた部分(壺(つぼ))に設けられた庭園を壺前栽(つぼせんざい)といった。通常は砂地草木を配した。平清盛(きよもり)の西八条殿の蓬壺(よもぎつぼ)、現在の京都御所の萩壺(はぎつぼ)などがこれに相当する。

 住宅建築の中庭は、周りが建物に囲まれているため落ち着いた感じにはなるが、比較的面積が小さい、日照時間が短い、風通しがよくないなどの難点もある。したがって、中庭をつくる際、排水処理がいちばんの問題になる。手軽な方法としては、庭に敷石砕石)をして水を吸い込ませるやり方がある。

 中庭のまとめ方としては、簡単には、周りの壁の部分を窓や障子垣根などで趣(おもむき)を出せば、地面はそのままでも眺められる。基本的には、狭い地面は単純にすっきりまとめたほうがいい。日当りが悪いなどの条件があるだけに、庭木を主にした庭景より石庭のほうがよく用いられる。洋風建築の中庭の場合も、周囲の雰囲気とあわせる意味で、庭地面にれんがや平らな石を敷き詰め、土を露呈しないほうが望ましい。庭木を使う場合は、カクレミノなどの日陰に強い樹種を用い、添景物も多用せずすっきりまとめることがポイントになる。この場合も排水設備にはもっとも注意が必要である。

[中村 仁]

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普及版 字通 「中庭」の読み・字形・画数・意味

【中庭】ちゆうてい

なか庭。宋・張先〔木蘭花〕詞 中色、正に 無數の楊ぎて影無し

字通「中」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中庭」の意味・わかりやすい解説

中庭
なかにわ
court

建築用語。それを取囲む室内空間群となんらかの関係をもって存在する建物内に取込まれた庭的なスペース。広さや性質は,時代,地域によってさまざまである。古代の中東や古代ローマの都市住宅,ルネサンスの邸館建築などには,このスペースを通風と採光の手段として用いたものが多い。日本の町家の坪庭やスペインの住宅建築のパセオも同様の意味をもっている。またこうした機能的な意味とともに,必然的に求心的な構成をもち,また往々にして方形に近い形をとるために,そこに象徴的な意味が付されることもある。中世ヨーロッパの修道院の回廊の中庭はこの例である。

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「中庭」の解説

なかにわ【中庭】

周囲を建物で囲まれた庭。

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世界大百科事典(旧版)内の中庭の言及

【庭園】より

…さまざまな水源から引かれた水は,概して直線的な水路を通って長方形ないし正方形に区画された花壇に配分される。中央で直角に交叉して全体を4分割するイランのチャハール・バーグchahār bāgh(四苑)がその典型である(アルハンブラ宮殿のライオンのパティオ(中庭)もその例である)。水景施設としては噴泉,方形の人工池(ハウドhauḍ)などが設けられる。…

※「中庭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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