ゴマヒレキントキ(読み)ごまひれきんとき(英語表記)glasseye

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴマヒレキントキ」の意味・わかりやすい解説

ゴマヒレキントキ
ごまひれきんとき / 胡麻鰭金時
glasseye
[学] Heteropriacanthus cruentatus

硬骨魚綱スズキ目キントキダイ科に属する海水魚。相模湾(さがみわん)から屋久島(やくしま)の太平洋沿岸、八丈島、小笠原(おがさわら)諸島、南西諸島、朝鮮半島南部、台湾南部、香港(ホンコン)など全世界の熱帯、亜熱帯域に広く分布する。体は高い楕円(だえん)形でよく側扁(そくへん)する。体高は体長の37.8~44.6%。尾柄(びへい)は細長い。目は大きく、眼径は吻長(ふんちょう)よりすこし長い。口は大きく、斜位で、下顎(かがく)前端は体の中央部の水平線上にある。上顎の後端は目の前縁をわずかに越える。上下両顎に絨毛(じゅうもう)状の歯帯があり、鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨にも同様の歯帯がある。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後縁と下縁に微細な鋸歯(きょし)があり、隅角(ぐうかく)部によく発達した棘(きょく)が1本ある。鰓耙(さいは)は上枝に4~5本、下枝に17~18本。頭部と体は小さくてはがれにくい櫛鱗(しつりん)で覆われるが、前鰓蓋骨の後部に無鱗域がある。側線有孔鱗数は58~62枚。背びれは10棘11~13軟条。棘部と軟条部の間には欠刻(切れ込み)がない。臀(しり)びれは3棘13~14軟条。背びれと臀びれの軟条部は極端に高くならない。腹びれの先端は臀びれ棘部に達する。尾びれの後縁は截形(せっけい)(後縁が上下に直線状)か、わずかに丸い。体色は赤桃色から銀桃色で、赤色や桃色のまだら模様のある個体もいる。背びれと臀びれの棘部は黄褐色、軟条部は赤色で、黒褐色の斑点(はんてん)が散在する。尾びれにも同色の斑点があり、後縁はやや黒みを帯びる。水深20メートル以浅のサンゴ礁域に単独あるいは小群で生息する。成魚島嶼(とうしょ)域に多い。夜に活発に活動し、頭足類、甲殻類、魚類、多毛類など食べる。産卵期は7~8月ころで、幼魚は夏から初冬にかけて伊豆半島で見られる。最大全長は約35センチメートル。釣り、延縄(はえなわ)、定置網などで漁獲されるが、漁獲量は少ない。刺身、煮魚などにする。

 本種が属するゴマヒレキントキ属は前鰓蓋骨の後部に無鱗域があることなどで、同じキントキダイ科のキントキダイ属と区別される。本種は側線有孔鱗数が62枚以下であること、背びれ、臀びれおよび尾びれに多数の黒褐色斑点があることでキントキダイ属の他種と区別できる。

[尼岡邦夫 2022年2月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例