クラウス(Lili Kraus)(読み)くらうす(英語表記)Lili Kraus

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

クラウス(Lili Kraus)
くらうす
Lili Kraus
(1905―1986)

ハンガリー出身のイギリスの女流ピアノ奏者で、モーツァルト演奏家として日本では非常に人気が高い。ブダペスト生まれ。同地の音楽院でバルトークコダーイに学び、のちベルリンでシュナーベルに師事したのち、演奏活動に入る。1936年バイオリンのゴールドベルクと組んで世界各地に楽旅、このコンビで同年(昭和11)初来日し、絶賛された。第二次世界大戦中、演奏旅行中のジャワで日本軍に抑留され、3年間の収容所生活を体験。戦後はもっぱら独奏者として活躍、63年(昭和38)に再来日し、円熟した芸風で第一級の女流奏者であることを示した。レパートリーは広くはないが、モーツァルトやシューベルトでは温かみのある感情表出に独自性を発揮した。

[岩井宏之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例