クトゥブ・ミナール(読み)くとぅぶみなーる(英語表記)Kutb (Qutb) Minar

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クトゥブ・ミナール」の意味・わかりやすい解説

クトゥブ・ミナール
くとぅぶみなーる
Kutb (Qutb) Minar

インド、デリー近郊のクトゥブ・モスク(別名マスジッド・クッワトゥル・イスラム)に付属する高塔。ミナールはイスラム寺院の一部で、礼拝のとき僧があがって信者に時を知らせる機能を有する。この塔は13世紀初めに創建され、円柱形で5層からなり、上にゆくにしたがって細くなり、途中に四つのバルコニーがある。第4、第5層は14世紀の改築。塔の高さは72メートル、インドに残る最古イスラム建築として名高い。いまは崩壊がひどいが、礼拝の間の正面壁に残る赤砂岩製の大きなアーチや、回廊式の百柱の間はインド初期イスラム建築の様式を伝えるものとして貴重である。1993年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。

[永井信一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クトゥブ・ミナール」の意味・わかりやすい解説

クトゥブ・ミナール
Qutb Minar

インドの首都ニューデリーの南郊に残るクトゥブ・モスク付属の尖塔 (→ミナレット ) 。 1200年頃,クトゥブ・ウッディーン・アイバクがイスラム王朝を打立てた戦勝記念に建てたインド最古のモスクに付属する記念塔の意味をもつ。5層 72.5mの高さで,基部の直径が 15m。当初は赤砂岩でできた3層であったが,14世紀なかばに大理石と砂岩の4,5層目と白大理石のドーム屋根がつけられた。塔の外壁には各所に『コーラン』の章句が刻まれている。 1993年クトゥブ・モスクとともに世界遺産の文化遺産に登録。

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世界遺産情報 「クトゥブ・ミナール」の解説

クトゥブ・ミナール

クトゥブ・ミナールは、インドの首都ニューデリー郊外にそびえ立つ高さ72.5mの石塔。1200年頃に北インドを征服したトルコ系軍人クトゥブッディーン・アイバクが建造しました。イスラム教によるインド支配を象徴するとともに、礼拝の呼びかけをするための塔で外壁にはイスラム教の聖典コーランの文字が刻まれています。塔は5層に分かれており1〜3層目は赤砂岩、4層目と5層目は大理石が使用されています。これは4層目と5層目が後の時代に建て直されたためだと言われています。クトゥブ・ミナールは1993年に周辺の建造物群とともに世界遺産に登録されました。

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世界大百科事典(旧版)内のクトゥブ・ミナールの言及

【クトゥブ・モスク】より

…12世紀末に北インドを征服したクトゥブッディーン・アイバクが1192‐98年に創建し,以後1世紀あまりの間に2度拡張され,現在ではかなり荒廃している。当初の部分の南東に建つクトゥブ・ミナールQuṭb‐Minārは,やはりクトゥブッディーンにより創建されたインド最大・最古のミナレット(尖塔)で,基部の直径14.3m,高さ72.5m。内部に螺旋階段を備え,外観は5層よりなり各層にバルコニーをつけている。…

【デリー】より

…インドの首都。連邦直轄領(面積1484km2)を形成し,行政的にはデリー(面積1398km2),ニューデリー(面積43km2),デリー軍事区(面積43km2)の三つに区分される。都市部人口は720万7000,農村部を含む人口は942万1000(1991)。ウッタル・プラデーシュ州とハリヤーナー州との州境部に位置し,東をヤムナー川,西と南をアラーバリ山地の最北にあたるデリー丘陵に囲まれたいわゆるデリー三角地にあたる。…

※「クトゥブ・ミナール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」