キンバエ(読み)きんばえ(英語表記)green bottle flies

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キンバエ」の意味・わかりやすい解説

キンバエ
きんばえ / 金蠅
green bottle flies

昆虫双翅(そうし)目環縫(かんぽう)亜目クロバエ科キンバエ属の総称、またはそのなかの1種。この属のハエは体全体が金緑色に光るのでこの名があり、地方によってはギンバエともよばれる。日本に約10種がおり、多くが動物の死体、糞(ふん)、ごみためなどに集まり、産卵する。孵化(ふか)した幼虫ウジ)はその腐肉を食べ、夏では4、5日で蛹(さなぎ)になる。蛹は赤褐色の楕円(だえん)形で、夏には5、6日で成虫になる。1雌の産卵数は200個以上で、卵は夏には約1日でかえる。

 キンバエLucilia caesarは、ほかのキンバエ類と区別するためにナミキンバエともいう。体長9~10ミリメートル、翅長7~8ミリメートルでやや大形種。胸部と腹部の背面周縁部は青藍(せいらん)色を帯び、中央部は黄金緑色を呈する。ヒロズキンバエL. sericataは、体長8~9ミリメートル、翅長7~8ミリメートルの中形種で、雄の頭部前額がかなり広い。胸部背面は緑色を帯びている。幼虫はサシとよばれて川釣りの餌(えさ)に使われる。ヒツジキンバエL. cupinaは、体長8ミリメートル、翅長7ミリメートルでやや小形種。銅色光沢はやや鈍い。アフリカオーストラリア乾燥地帯では、ヒツジの傷口に産卵し、蠅蛆(はえうじ)症をおこし、羊毛被害をもたらす有名な家畜害虫である。カエルヤドリキンバエL. bufonivoraは、カエルの鼻孔内に幼虫が寄生する。

倉橋 弘]


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改訂新版 世界大百科事典 「キンバエ」の意味・わかりやすい解説

キンバエ

双翅類昆虫のうち,体が金緑色または青緑色の金属光沢をもっているものの総称。主として,クロバエ科に属するハエを指すが,イエバエ科,ヤドリバエ科にも外見上類似した種が多い。英語では,クロバエ科に属し,体が金緑色の光沢をもつものをgreen bottle flyといい,人や家畜の害虫として有名な種が多い。和名キンバエLucilia caesarは,体長7~10mm。体は金緑色,ときに青緑色を帯びる。北海道から九州まで,日本全土に分布する。平地の森林内に多く,動物の死体,人やイヌの糞などがおもな発生源である。成虫は,5~9月にかけて多く出現する。卵は,幼虫の食物となる死体などに直接産みつけられる。幼虫期間は,25℃で8~9日,蛹化(ようか)後4~5日で成虫となる。キンバエは,成虫で越冬するが,成虫越冬する種,前蛹期で越冬する種などがある。近縁種は多く,コガネキンバエ,スネアカキンバエ,ミドリキンバエ,ヒロズキンバエなどがあげられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キンバエ」の意味・わかりやすい解説

キンバエ
greenbottle fly

双翅目クロバエ科に属するハエのうちで体が緑色ないし青色の金属光沢をもつ種の総称。オビキンバエ Chrysomya megacephala,ルリキンバエ Protophormia terraenovae,スネアカキンバエ Lucilia porphyrina,ヒツジキンバエ Phaenicia cuprinaなど多くの種がある。最も代表的なナミキンバエ (単にキンバエともいう) L. caesarは体長6~12mm,通常体は黄緑色で金属光沢が強いが,大きさの個体差が著しく,また色彩も変異に富む。複眼は濃赤褐色。翅は黄色を帯び,鱗片は褐色を帯びる。日本全土にみられ,世界各地に分布する。幼虫は人畜の糞,ごみため,動物の死体などを食べて育つ。

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百科事典マイペディア 「キンバエ」の意味・わかりやすい解説

キンバエ

双翅(そうし)目クロバエ科の昆虫の1種。体長6〜12mm,金緑色で,ときに青みを帯びる。日本全土,朝鮮半島,中国,シベリア,ヨーロッパに広く分布。幼虫は糞(ふん),動物の死体,ごみためなどに発生し,成虫も同様のものを好む。室内にもよく飛来する衛生害虫。初夏と秋に特に多く発生する。キンバエ属はほかにミドリキンバエ,コガネキンバエなど多くの種類がある。特にヒツジキンバエはオーストラリアでは幼虫がヒツジの体内に寄生するため重要な害虫に数えられる。

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