キビレカエルアマダイ(読み)きびれかえるあまだい(英語表記)yellowfin jawfish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キビレカエルアマダイ」の意味・わかりやすい解説

キビレカエルアマダイ
きびれかえるあまだい / 黄鰭蛙甘鯛
yellowfin jawfish
[学] Stalix toyoshio

硬骨魚綱スズキ目アゴアマダイ科に属する海水魚。鹿児島県の種子島(たねがしま)海峡から3個体がとれているだけである。体高は他種に比べてやや低く、体長の18.3~19.7%。頭部を除いて側扁(そくへん)する。頭は円筒形。吻(ふん)はきわめて短い。目はやや小さくて(眼径は体長の9.6~10.2%)、頭の前端に位置し、上顎(じょうがく)にきわめて接近する。両眼間隔幅は狭くて、およそ眼径の3分の1。口は非常に大きく、ほとんど水平に開く。下顎はわずかに上顎に含まれる。上顎の後端は目の後縁から眼径の0.6~0.7倍後方に伸びる。主上顎骨は後端で幅が広くなり、わずかに上を向く。上顎長は体長の17.4~18.0%。上顎は前部に3列の円錐歯(えんすいし)が並び、外列歯は内列歯より大きい。下顎には3~4列の円錐歯がある。鰓耙(さいは)は上枝に11本と下枝に21~22本が並ぶ。鱗(うろこ)は小さく、縦列鱗(りん)数は55~57枚。頭部、項部(背びれ起部より前の後頭部)、胸部側線上方胸びれ基底および腹びれの基底の後ろに鱗がない。側線は鰓孔の上方付近から背びれ基底近くに沿って走り、第1番目の分節した軟条下方に達する。側線孔は埋もれた側線管に近接してまばらに開く。頭部感覚孔はよく発達し、下顎のもっとも前の2孔は癒合する。背びれは11棘(きょく)11軟条で、背びれ棘は後方に向かって長くなり、第1棘~第6棘は先端で強く二叉(にさ)する。第1番目の分節した軟条は分枝しないが、それ以外は分枝する。臀(しり)びれは2棘11軟条。尾びれの後縁は丸い。腹びれは短く、肛門(こうもん)に達しない。頭と体は淡褐色、頭部に褐色の斑紋(はんもん)がある。背びれと臀びれの先端の4分の3、尾びれおよび腹びれの中央部は黄色。最大体長は4.3センチメートルほどになる。水深80メートル付近にすむ。6月に採集した個体がよく発達した卵をもっていたことから、産卵期は夏ごろと推定される。種小名toyoshioは本種のタイプ個体を採集した広島大学の調査船の豊潮丸に由来する。

 アゴアマダイ科は、口が大きく、頭は無鱗、腹びれは1棘5軟条で、外側の2本の軟条は強くて不分枝、内側の3本の軟条は弱くて分枝するのが顕著な特徴である。本種は同科のカエルアマダイ属に属するが、同属は背びれ棘部が低くて、棘の先端が二叉すること、背びれと臀びれの軟条数が少ないことなどで、アゴアマダイ科のもう1属のアゴアマダイ属と容易に区別できる。

[尼岡邦夫 2022年2月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例