キノリン
きのりん
quinoline
環内に窒素原子を含む複素環式化合物の一つ。1-アザナフタレンともいう。石炭の乾留により得られるコールタール中に存在する。弱い塩基性をもっている。
ニトロベンゼン、アニリン、グリセリンの混合物に濃硫酸を加えて加熱すると得られる。この反応は1880年にオーストリアのスクラウプZdenko Hans Skraup(1850―1910)により最初に報告されたので、「スクラウプ反応」または「スクラウプのキノリン合成」とよばれている。
不快臭をもつ無色の液体で、熱水、薄い酸、エタノール(エチルアルコール)、エーテルなどに溶ける。ベンゼン環とピリジン環とが縮合した構造をもっていて、還元はピリジン環でおこり、強く酸化するとベンゼン環のほうが壊れてキノリン酸になる。また、ニトロ化などの求電子置換はベンゼン環上におこりやすく、アミノ化などの求核置換はピリジン環上におこる。アルカロイドおよびキノリン染料の重要な合成原料となるほか、分析試薬としての用途をもつ。
[廣田 穰]
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キノリン
quinoline
コールタール中に存在する不快な臭いをもつ,無色の弱塩基性液体。沸点 238℃。キノリン染料,アルカロイド,医薬品の合成原料。塩酸溶液中にヨウ化カリウム存在下で Bi3+ ,Sb3+ ,Sn4+ ,Zn2+ ,Pb2+ などの金属イオンと不溶性塩をつくるので,これらの金属イオンの定量分析に用いられる。また硝酸溶液中にチオシアン酸アンモニウムが存在すると,Fe3+ ,Zn2+ ,Cd2+ ,In3+ などの金属イオンの不溶性塩をつくるので,この性質はこれらの金属イオンの定量に利用される。アニリン,グリセリン,ニトロベンゼンを硫酸存在下で反応させて得られる (スクラウプ法) 。
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キノリン
ベンゼン環とピリジン環とをもつ複素環芳香族化合物。不快臭のある無色の液体。融点−15℃,沸点237.1℃。水に難溶,エタノールなど有機溶媒に可溶。窒素原子の位置が異なる異性体をイソキノリンという。キノリン染料および医薬原料。代表的な製法としては,アニリンとグリセリンを混合し,ニトロベンゼンなどの酸化剤と濃硫酸を加えて加熱して得る(スクラウプ法)。(図)
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キノリン
〘名〙 (quinoline) 不快臭のある無色の弱塩基性液体。アルカロイド、キノリン染料の合成原料。イオンの定量などにも用いられ、多くの誘導体がある。ヒノリン。ロイコリン。2、3‐ベンゾピリジン。
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デジタル大辞泉
「キノリン」の意味・読み・例文・類語
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キノリン【quinoline】
ベンゼン環とピリジン環とが縮合した構造をもつ複素環芳香族化合物。縮合の位置が異なる異性体をイソキノリンという。キノリンは不快な臭気のある無色の液体で,沸点237.1℃,弱い塩基性を示す。通常の有機溶媒にはよく溶けるだけでなく吸水性も示す。コールタール,骨油などに含まれる。1880年,オーストリアのスクラウプZ.H.Skraup(1850‐1910)によってアニリンとグリセリン,濃硫酸,適当な酸化剤を原料とする簡便な合成法が見いだされた(スクラウプ合成)。
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