日本大百科全書(ニッポニカ) 「カターサリットサーガラ」の意味・わかりやすい解説
カターサリットサーガラ
かたーさりっとさーがら
Kathāsaritsāgara
古代インドのサンスクリット説話集。18編2万1388頌(しょう)からなり、350種の物語を含んでいる。グナーディヤ作の亡失した大説話集『ブリハットカター』を改作したもので、作者ソーマデーバがジャランダラ国の王女の憂悶(ゆうもん)を慰めるため、1063年から81年まで約20年を費やして書いたという。枠になる物語として、ウダヤナ王の行状記とナラバーハナ王子の行状記があり、「物語の流れ入る海」という題名に背かず、興味ある多数の挿話を包含し、古代インドの文化、社会状態を描き出している。説話文学の傑作として、また東西比較文学の立場からも重要な作品である。ソーマデーバは、北インド、カシミールの人で詩人であった。
[田中於莵弥]
『岩本裕訳(抄)『カター・サリット・サーガラ』全四冊(岩波文庫)』