エチミアジン(英語表記)Echmiadzin

デジタル大辞泉 「エチミアジン」の意味・読み・例文・類語

エチミアジン(Echmiadzin)

アルメニア北西部の古都首都エレバンの西約20キロメートル、アララト平野に位置する。紀元前2世紀頃の古代都市バルツケサバンに起源し、その後、バガルシエ1世にちなみバガルシャパト改称。2世紀後半から4世紀にかけてアルメニア王国の首都が置かれた。4世紀初頭に創建されたエチミアジン大聖堂をはじめ、7世紀建造の聖リプシメ教会聖ガヤネ教会、および17世紀建造のショガカト教会などが、2000年に「エチミアジンの大聖堂と教会群及びズバルトノツの古代遺跡」の名称で世界遺産(文化遺産)に登録された。エチミアツィン

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改訂新版 世界大百科事典 「エチミアジン」の意味・わかりやすい解説

エチミアジン
Echmiadzin

アルメニア共和国の首都エレバンの西方約20kmの都市。人口3万7000(1974)。1945年まではバガルシャパトVagarshapatと呼ばれた。301-303年ころ,キリスト教聖堂エチミアジン(唯一者の子孫)が建設され(アルメニア聖堂建築の最も早い例の一つ),やがてその名が町名となった。聖堂はのちに独立アルメニア教会の中心,大主教座聖堂として改修を重ね,原状をとどめていない。しかし町の周辺には,四龕(がん)式(内接四葉形)プランのリプシメ聖堂(618),ギリシア十字式プランのガヤネ聖堂(630ころ)など,スキンチ構法による円蓋を多角錐形の外観にまとめた,アルメニア建築の特色を示す作例が残されている(アルメニア美術)。やや離れたズバルトノツZvartnotsには,四葉形の内陣を円形の周廊で囲んだ大聖堂(7世紀)の礎石柱頭などが見られる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エチミアジン」の意味・わかりやすい解説

エチミアジン
えちみあじん
Эчмиадзин/Echmiadzin

アルメニア共和国の都市。人口6万5500(1999)。1945年まではワガルシャパトВагаршапат/Vagarshapatと称した。アララト平野に位置し、共和国首都エレバンから西方20キロメートルにあたり、鉄道駅から市街までは15キロメートル離れている。プラスチック、工芸品、電子部品、金属加工、食品加工などの工場があり、郷土館、図書館司書養成学校、絵画館などが置かれている。

 市はカフカス地域屈指の古都で、またアルメニア正教会の司教座が置かれたために市勢はきわめて盛んであった。現在の市域のなかにも紀元前2世紀に古代都市バルツケサバンがあったことが確かめられ、紀元後1~2世紀に国王バガルシエ1世にちなむ都市バガルシャパトがあり、2世紀後半から4世紀にかけてアルメニア古代王国の首都であった。現在も旧市内は曲がりくねった細道が多く、303年建立(7世紀に改築)の大聖堂、トラベズナヤ修道院(17世紀建立)があり、そのほかリプシメ教会(7世紀)、ガヤーネ教会(7世紀)、ショカガット教会(17世紀)などが保存されている。近郊にも教会などの遺跡が多い。

渡辺一夫

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エチミアジン」の意味・わかりやすい解説

エチミアジン
Ejmiatsin; Ejmiadzin

アルメニア西部の都市。1945年までバガルシャパト Vagarshapat。首都エレバンの西約 20km,アラス川流域の平野にある。前6世紀にさかのぼる古都で,140~344年に古代アルメニアの首都であり,300年頃にはエチミアジン大聖堂にアルメニア・カトリックの大主教座が置かれた。その後 453年大主教座はほかに移されたが,1441年に戻り,以後アルメニア教会の中心地となっている。リプシメ聖堂(618),ガヤネ聖堂(630)など古い建築物が保存されており,これらの教会群,大聖堂は 2000年スバルトノツ教会の遺跡とともに世界遺産の文化遺産に登録された。工業が発達し,ブランデー「アララト」の製造,プラスチック加工,缶詰製造などの工場がある。人口 5万7300(2008推計)。

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世界大百科事典(旧版)内のエチミアジンの言及

【アルメニア教会】より

…アルメニアは4世紀初頭,世界で初めてキリスト教を国家宗教として受容した。カトリコスと呼ばれる教会の首長の座はエレバン西方20kmのエチミアジン(1945年まではバガルシャパトと称した)に置かれ,4世紀末までカッパドキアのカエサレア主教の管轄下にあった。5世紀初頭メスロプ・マシトツがアルメニア文字を考案,さらに聖書のアルメニア語訳を完成させた。…

【アルメニア美術】より

…6世紀後半から7世紀末までがアルメニア建築の〈第1の隆盛期〉であって,バシリカ形式の存続するかたわら多数の集中式建築の聖堂が建てられ,円形,三葉形,四葉形など,プランも構造も種類に富み,そのなかから正方形と十字形を組み合わせたものがアルメニア聖堂建築の古典形式として将来の発展を保証される。エチミアジンの聖堂がその早い例で7世紀初めに復興されたもので,形式は5世紀末にさかのぼるともいわれ,正方形の中央に4基柱をおいて,円蓋をのせ,これを四方から半円筒ボールトで支え,さらに四隅に交差ボールトを挟んで均衡させる方式で,複雑なものはこの四隅に小円蓋を置き,さらに後代では中央の円蓋を大きくし,単廊式聖堂に近づけて統一感を高めている。9世紀から11世紀にいたる〈第2の隆盛期〉では,これがさらに彫刻の技巧,装飾の整備を加え,芸術的表現を豊かにしている。…

※「エチミアジン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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