インスティチューショナル・リサーチ

大学事典 の解説

インスティチューショナル・リサーチ

大学等の高等教育機関関係者が,自らの所属機関を対象として行う調査研究活動のこと。IRは1960年代以降急速に発展し,北米,ヨーロッパ,オーストラリア諸国など多くの大学に担当部署が設置されている。1965年にはIRの学会・専門職団体AIR(Association of Institutional Research)が設立され,学術雑誌刊行や年次大会,ワークショップの開催などさまざまな活動を展開している。たとえば,アメリカ合衆国ではIRの一般的業務として,大学の概要(Fact Book)の作成,学内外への報告業務,適格認定(アクレディテーション)への対応,入学・在籍の分析,学習成果の測定,戦略計画策定,学内コンサルティングなどが挙げられている。日本でも2008年の「学士課程教育の構築に向けて(中教審答申)」で推奨されて以降,質保証を支える役割として期待されている。

 所属機関のIR専従担当者あるいはその研究を行う専門家はIRerと呼ばれており,予算・財源配分や教職員の人事統計,入学者・卒業生の動向等に関するデータ分析,年次報告書の作成や第三者評価への対応などきわめて多様な業務を担っている。テレンジーニ,P.T.(1999年)は,IRerに求められる知性として「技術的・分析的知性」「問題知性」「文脈上の知性」の3層構造を提示している。日本においてもIRerの育成急務課題とされ,実践と研究,OJT(On the Job Training)Off-JT(Off the Job Training)による能力開発が進められている。
著者: 山田剛史

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

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