改訂新版 世界大百科事典 「アリエノールダキテーヌ」の意味・わかりやすい解説
アリエノール・ダキテーヌ
Aliénor d'Aquitaine
生没年:1122?-1204
フランス国王ルイ7世,次いでイギリス国王プランタジネット家のヘンリー2世の王妃。エレオノール・ダキテーヌÉléonore d'Aquitaineともいう。祖父は最古のトルバドゥールで,アキテーヌ公,ポアティエ伯のギヨーム9世で,幼時から文学的環境に育ち,両国王との結婚により,南仏の文学伝統および貴婦人崇拝の観念を,北フランスおよびイギリスの宮廷に導入する。ベルナール・ド・バンタドゥールも彼女に仕え,また,《ブリュ物語》(ワース作),《トロア物語》も彼女に捧げられたほか,トリスタン物語の発展にも彼女の貢献があったとされる。子どもたち--シャンパーニュ伯夫人マリー,ブロア伯夫人アエリス,ヘンリー若王,リチャード獅子心王,ババリア(バイエルン)公夫人マチルドらも,母親譲りの優れた文芸庇護者であった。アリエノールは文学史上に重要な役割を果たしたのみならず,ヘンリー2世の死後は政治の面でも驚くべき手腕を発揮した。彼女の2度にわたる結婚は,以後の英仏紛争の原因ともなった。
執筆者:新倉 俊一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報