やも(読み)ヤモ

デジタル大辞泉 「やも」の意味・読み・例文・類語

やも[係助]

[係助]係助詞「や」+係助詞「も」から。上代語
文中用法)名詞、活用語の已然形に付く。
詠嘆を込めた反語の意を表す。
「うつせみの世―二行くなにすとかいもに逢はずてがひとり寝む」〈・七三三〉
㋑詠嘆を込めた疑問の意を表す。
江林えはやしに伏せるしし―求むるに良き白たへの袖巻き上げて猪待つ我が背」〈・一二九二〉
(文末用法)
㋐已然形に付いて、詠嘆を込めた反語の意を表す。…だろうか(いや、そうではない)。
「とこしへに君も逢へ―いさなとり海の浜藻の寄る時々を」〈允恭紀・歌謡
㋑已然形・終止形に付いて、詠嘆を込めた疑問の意を表す。…かまあ。→めやも
「あしひきの山の常陰とかげに鳴く鹿の声聞かす―山田守らす児」〈二一五六〉
[補説]「も」は、一説間投助詞ともいわれる。中古以降には「やは」がこれに代わった。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「やも」の意味・読み・例文・類語

や‐も

(係助詞「や」「も」の重なったもの)
[一] 文中用法。文中の連用語を受け連体形で結ぶ。
① 疑問・反語の意を表わす。
万葉(8C後)四・七三三「うつせみの世也毛(ヤモ)二行くなにすとか妹に逢はずて吾がひとり寝む」
※万葉(8C後)七・一二九二「江林に伏せる猪鹿(しし)也物(ヤモ)求むるに良き白たへの袖巻き上げて猪鹿(しし)待つ我が背」
② 詠嘆を表わす。
※万葉(8C後)一六・三七九一「古へ ささきし我れや はしきやし 今日八方(やも)児らに いさにとや 思はえてある」
[二] 文末用法。
① 活用語の終止形を受け、疑問・反語の意を表わす。
※万葉(8C後)二・二二四「今日今日と吾が待つ君は石川の貝に交じりてありと言はず八方(やも)
② 活用語の已然形を受け、反語の意を表わす。
書紀(720)允恭一一年三月・歌謡「常しへに君も逢へ揶毛(ヤモ)いさな取り海の浜藻の寄る時々を」
※万葉(8C後)一・二一「紫のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに吾れ恋ひめ八方(やも)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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