まさか

精選版 日本国語大辞典 「まさか」の意味・読み・例文・類語

まさ‐か

[1] 〘名〙
目前の時。さしあたって今。まさに今。現在。当座
万葉(8C後)一四・三四一〇「伊香保ろの岨(そひ)の榛原ねもころに将来(おく)をな兼ねそ麻左可(マサカ)しよかば」
② 今まさにある事態に直面すること。予期しない危急の事態に直面することをいう場合が多い。
浮世草子・忠孝永代記(1704)一「まさかの役にたたず」
[2] 〘副〙
① (打消や反語の表現を伴って) そういう事態はなかなかありえないこと、また実現がむずかしいことを強調する語。よもや。いくらなんでも。→まさかに
歌舞伎幼稚子敵討(1753)二「是でなければまさか人は斬れぬ」
滑稽本・七偏人(1857‐63)五「まさか左様した理屈もあるめへ」
② まさにその状態であることを肯定して、強調する。まさしく。いつわりなく。本当に。→まさかに
※滑稽本・古朽木(1780)一「森羅万象かんで含るやうに出来てあれど、まさか覚(おぼえ)ようといふ心のものが少い」
③ 強く否定する応答語として、語尾を強めて単独に用いる。いやいやとんでもない。
破戒(1906)〈島崎藤村〉一六「『まあ、其様(そん)嫌疑のかかるのは勝野君位のものだ』『まさか』」
[語誌](1)「ま」は「め(目)」の交替形で、「目前(まさき)」の転とする説もあるが、「まさき」の例は確認できない。語基「まさ(正)」に「か」が接したものかと思われる。「か」は、「すみか(住処)」などと同じく場所を表わす語とも、情態性の語を形成する接尾語とも見られる。
(2)(二)のような副詞用法の確例は近世に入ってから認められる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報