ただならず（読み）タダナラズ

デジタル大辞泉

ただ‐なら◦ず

［連語］
１ 普通でない。ただごとでない。「―◦ぬけはい」
２ （「…もただならず」の形で）それどころの程度ではない。「犬猿も―◦ぬ仲」
３ ひときわすぐれている。
「霧いたう降りて―◦ぬ朝ぼらけに」〈源・賢木〉
４ からだの状態が普通でない。妊娠している。
「男、夜な夜な通ふほどに…身も―◦ずなりぬ」〈平家・八〉

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

ただ‐なら・ず

〘連語〙 普通のことではない。ただごとではない。ただならない。

(イ) 様子がいわくありげである。様子ありげである。

※大和（947‐957頃）一一三「おほぞらもたたならぬかな十月我のみしたにしぐるとおもへば」

(ロ) 普通よりもすぐれている。並はずれて秀でている。

※義孝集（974頃）「秋はなほ夕まぐれこそたたならね荻の上かぜ萩の下露」

※源氏（1001‐14頃）賢木「霧いたう降りて、ただならぬ朝ぼらけに、うちながめてひとりごちおはす」

(ハ) 身体の様子がいつもとは異なっている。妊娠している。

※宇津保（970‐999頃）俊蔭「かの女君ゆめのごとありしに、ただならずなりにけり」

(ニ) なみたいていではない。非常に程度が大きい。

※死者生者（1916）〈正宗白鳥〉六「二十二のこの歳まで女といふものを知らなかった信造には、噂を立てられただけでも啻(タダ)ならぬ身の上の事件だった」

出典　精選版 日本国語大辞典