かべす(読み)カベス

デジタル大辞泉 「かべす」の意味・読み・例文・類語

か‐べ‐す

歌舞伎などの芝居小屋で、菓子弁当すしのこと。江戸時代から大正期まで、芝居茶屋に立ち寄らない中等の客は、この三品だけを取り寄せる習慣であった。そのため、質素な客を揶揄やゆする語としても用いられた。

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精選版 日本国語大辞典 「かべす」の意味・読み・例文・類語

か‐べ‐す

〘名〙 歌舞伎芝居社会での用語。「かし(菓子)」「べんとう(弁当)」「すし(鮨)」の三語を合わせた略称。古く、芝居茶屋に立ち寄らないで木戸から入った中等の客は、この三品だけを取り寄せる習慣であった。また、そうした質素な、けちな客を軽侮していう語。
※歌舞伎・月梅薫朧夜(花井お梅)(1888)二幕「今日はどうした気まぐれか、三人連れでデモ膳で、一ぱい呑むと言ひましたが、いつもカベスのお定(き)まりで渡りも出さぬ締り見世」

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世界大百科事典(旧版)内のかべすの言及

【芝居茶屋】より

…一方,茶屋を通らずに木戸から入って出方に案内され,平土間で見物する中等の客も,酒肴は取らないまでも菓子,弁当,寿司だけは茶屋から取り寄せた。この三つの品の頭文字をいっしょにして〈かべす〉といい,〈かべすで見る〉〈かべすの客〉などと,質素な客を侮蔑的に表現した。 芝居茶屋は一面で,劇場の興行を支える重要な役割を担っていた。…

※「かべす」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」