Ki67(読み)けーあいろくじゅうなな

日本大百科全書(ニッポニカ) 「Ki67」の意味・わかりやすい解説

Ki67
けーあいろくじゅうなな

がん細胞の増殖能(進行スピード)を表す生体内のマーカー。細胞の核に存在するタンパク質で、細胞周期の休止期(G0期)には認められず、増殖過程(G1期、S期、G2期、M期)で発現する。腫瘍(しゅよう)細胞に占めるKi67陽性細胞(Ki67が確認された細胞)の割合をKi67値とし、この値が高いほど悪性度も高いと考えられている。

 近年、がん細胞の性質に基づいて乳がんを五つのタイプに分ける「サブタイプ分類」(ルミナルA型、ルミナルB型〈HER2(ハーツー)陰性〉、ルミナルB型〈HER2陽性〉、HER2型、トリプルネガティブ)が定着し、治療選択の際に利用されているが、Ki67値はエストロゲン受容体やプロゲステロン受容体、HER2タンパクとともにサブタイプ分類の指標となっている。

 Ki67陽性細胞の検出は病理組織切片を免疫染色して行う。乳がん以外にも神経内分泌腫瘍や悪性リンパ腫、脳腫瘍、肉腫などで測定されるが、現段階では染色方法や陽性細胞のカウント法、陽性細胞数と乳がん陽性率の関係などに関して一定の見解が得られておらず、Ki67の評価方法は標準化されていない。

[渡邊清高 2019年10月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android