飾師(読み)かざりし

改訂新版 世界大百科事典 「飾師」の意味・わかりやすい解説

飾師 (かざりし)

飾りをおもな仕事とする職人で,飾職ともいった。飾りは錺とも書き,金属加工技術のうちの鎚金(ついきん),鎚起(ついき)のことをいう。金属板を金床に置き金づちでたたいて造形する。中世の銀細工(しろがねざいく)の技法を受けつぎ,近世になって独立した。さらに彫金,細金(ほそがね)細工,鑞付(ろうつけ),滅金(めつき)(鍍金)などの金属表面処理の技法もとりいれてきた。仕事は居職で,京都・大坂・江戸が技術の中心であった。鎖・指輪・簪(かんざし)・煙管(きせる)(後に煙管師が分化)などやたんす・長持などの家具の金物,または灯籠駕籠・輿・車などの金具や建築物の家形飾(やかたかざり)などを作った。近代になって,装身具の流行につれて,金属加工技術の総合性は進み,ネックレス,イアリングカフスボタン,宝石箱,タバコケース,コンパクトなどもつくるようになり,近世に金属加工技術の一分野として分化した飾師は,そのほかの分野の銀師(銀細工の後身)・金彫師・滅金師などの仕事を総合してきたのであった。
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