顕微鏡的大腸炎

内科学 第10版 「顕微鏡的大腸炎」の解説

顕微鏡的大腸炎(薬剤起因性消化管障害)

(2)顕微鏡的大腸炎
(microscopic colitis:MC
 顕微鏡的大腸炎は下血を伴わない水様下痢を呈する疾患で,おもに高齢者に多く認められる.MCは,病理組織学的には上皮下に肥厚したcollagen bandを伴うcollagenous colitis(CC)と,collagen bandを欠き粘膜上皮内にリンパ球の増加を示すリンパ球性大腸炎(lymphocytic colitis:LC)に大別されるが,臨床的には鑑別しがたい.疫学的には遺伝的素因,橋本病などの自己免疫疾患,糖尿病などとの関連が示唆されているが,病因は不明である.さまざまな薬剤(NSAIDs,PPI)との関連が認められる.典型的なMC患者は長期に続く下痢などの症状をきたす.欧米では内視鏡的および注腸検査では異常所見を認めないことが特徴的であるとされ,MCと命名されてきた.その発生率は10万人あたり10例とされ,潰瘍性大腸炎とCrohn病と同等と報告されている.わが国でも,特にCCの報告例が増えており,縦走潰瘍などの潰瘍性病変をみることもある.薬剤起因性では,原因薬剤の中止で症状は改善し治癒する.薬剤の関与が不明あるいは薬剤の中止が不可能の場合には,ブデソニド(ステロイド製剤)の投与が有効とされる[平石秀幸]
■文献
Stewart MJ, et al: Prednisolone and budesonide for short- and long-term treatment of microscopic colitis: systematic review and meta-analysis. Clin Gastroenterol Hepatol, 9: 881-890, 2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報