非ウェルナー錯体(読み)ヒウェルナーサクタイ

化学辞典 第2版 「非ウェルナー錯体」の解説

非ウェルナー錯体
ヒウェルナーサクタイ
non-Werner complex

アンミン錯体アクア錯体などのウェルナー錯体と異なるカルボニル錯体,アリル錯体などの総称.いずれも金属-炭素間結合を少なくとも一つはもっている.ウェルナー錯体は,中心金属原子と配位子の結合がσ結合で,静電的な部分が強いのに対し,非ウェルナー錯体は,中心金属原子のd軌道と配位子の反結合性π軌道の重なりにもとづく逆供与による部分が強いのが特徴である.ウェルナー錯体が塩の性質を示すものが多いのに対し,非ウェルナー錯体はイオン性が少ない.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の非ウェルナー錯体の言及

【錯体】より

…またOs5(CO)16のような金属クラスター化合物は,Os原子が5個直接結合してできた中心核に対してCOが配位した多核錯体であるが,性質等がかなり異なるので別に論ずる場合が多い。これらのウェルナーの配位説によって説明できないような錯体のことを非ウェルナー錯体という。錯体の定義において中心原子を金属に限った場合に,できた錯体を金属錯体とよぶことがある。…

【錯体化学】より

…しかし遷移金属のみならず一般的な金属あるいは非金属元素までも中心原子として取り扱われることになり,さらに配位子でもしだいに複雑な有機性配位子,とくに多座配位子として多くの有機物質が対象とされるようになってきて,たとえばEDTAをはじめとするコンプレキサン類,あるいは色素,ポルフィリン,ヘム,タンパク質などまで取り扱うようになった。さらに1951年のフェロセンの発見がきっかけになって,メタロセンをはじめとして,ジベンゼンクロムなどのサンドイッチ錯体や芳香環錯体,あるいはオレフィン錯体,アリル錯体がつくられ,またそれらの構造が明らかにされ,ツァイゼ塩における結合が理解されて非ウェルナー錯体の分野が開拓されることになった。非ウェルナー錯体とはウェルナーの配位理論によって説明できる錯体をウェルナー錯体とよぶのに対し,それでは説明できない上記のような錯体を非ウェルナー錯体という。…

※「非ウェルナー錯体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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