陰獣(読み)インジュウ

デジタル大辞泉 「陰獣」の意味・読み・例文・類語

いんじゅう〔インジウ〕【陰獣】

江戸川乱歩の中編推理小説。昭和3年(1928)「新青年」誌に発表。約1年2か月の断筆を経て書かれた復帰作。

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精選版 日本国語大辞典 「陰獣」の意味・読み・例文・類語

いん‐じゅう ‥ジウ【陰獣】

〘名〙 陰性のけだもの、特にキツネ
浮世草子世間妾形気(1767)四「かの陰獣(インジウ)恩のために酬ひ」 〔路季登‐皇帝冬狩一箭射双兎賦〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「陰獣」の意味・わかりやすい解説

陰獣
いんじゅう

江戸川乱歩の推理小説。1928年(昭和3)3月『新青年』増刊号に発表。実業家小山田氏夫人と知り合った「わたし」(探偵作家)は、彼女と結婚前に関係のあった男で現在は同業の探偵作家である大江春泥から脅迫されているという話を聞かされる。春泥は復讐(ふくしゅう)の手始めに夫人の夫、小山田氏をまず血祭りにあげると予告し、事実、夫の死体隅田川で発見される。当時の作者自身を彷彿(ほうふつ)とさせる春泥の異常性格や言動が謎(なぞ)の焦点となるが、最後に意表をつく逆転劇が用意されている。構成、サスペンストリック三拍子そろった乱歩の代表作で、とくに作者自身のイメージをトリックの一つに使用した点ではユニークな作品といえる。

厚木 淳]

『『江戸川乱歩名作集1 陰獣ほか3編』(春陽文庫)』

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