錏・錣・𩊱(読み)しころ

精選版 日本国語大辞典 「錏・錣・𩊱」の意味・読み・例文・類語

しころ【錏・錣・𩊱】

〘名〙
① 兜(かぶと)の鉢につけて頸(くび)から襟(えり)を防御するもの。多くは札(さね)または帯状の鉄板を三段ないし五段下りとして威しつける。段により三枚錏、五枚錏などという。近世の当世錏には饅頭錏、日根野(ひねの)錏、割(わり)錏などの種類がある。
平家(13C前)八「甲(かぶと)のしころをかたぶけて」
錏頭巾の三方を覆うために取りつけたもの。
※談義本・当世下手談義(1752)二「縮緬頭巾の、しころが、七の図迄下る百姓は」
※俳諧・本朝文選(1706)三・賦類・四梅廬賦〈李由〉「廂(ひさし)に孫庇をおろし、下側にしころをつけて」
④ 砧(きぬた)を打つ槌(つち)。しころづち。〔俚言集覧(1797頃)〕
[語誌](1)「」〔運歩色葉〕、「」〔饅頭屋本節用集〕などとも表記される。古く、古墳時代の兜にも板錏または小札錏の存在が見られるが、平安中期に純日本式鎧が出現するに伴って、星兜に付随した錏も、正面左右を折り返して「吹き返し」とする工夫がなされ、以後定着する。
(2)「平家‐一一」の、屋島合戦の際の「錏引き」の逸話は、後の謡曲浄瑠璃などの素材として継承された。→錏引(しころびき)

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