日本大百科全書(ニッポニカ) 「野中寺(やちゅうじ)」の意味・わかりやすい解説
野中寺(やちゅうじ)
やちゅうじ
大阪府羽曳野(はびきの)市野々上(ののうえ)にある高野山真言(こうやさんしんごん)宗(もと真言律宗)の寺。青竜(せいりゅう)山徳蓮(とくれん)院といい、俗に「中(なか)の太子(たいし)」とよばれる。本尊は薬師如来(やくしにょらい)。寺伝では聖徳太子の命で蘇我馬子(そがのうまこ)が建立したといい、創建当初は法隆寺の七堂伽藍(がらん)の配置に似た様式で野中寺様式ともいうべきものであったが、南北朝時代に兵火で全焼した。現在の堂宇は寛文(かんぶん)年間(1661~73)に再建したもので、戒律の寺として栄えた。慈雲(じうん)尊者飲光(おんこう)(1718―1804)も住したことがある。旧伽藍跡は国指定史跡。金銅弥勒菩薩半跏(みろくぼさつはんか)像(飛鳥(あすか)末期)、木造地蔵菩薩立像(鎌倉時代)は国重要文化財。
[宮坂宥勝]