那智田楽(読み)なちでんがく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「那智田楽」の意味・わかりやすい解説

那智田楽
なちでんがく

和歌山県の熊野那智大社(東牟婁(ひがしむろ)郡那智勝浦町)に伝わる田楽。7月14日の夏祭に演じられる。熊野三山の一つ那智権現(ごんげん)の祭礼で、いまでは那智火祭(扇祭ともいう)として有名だが、もとは水無月(みなづき)の滝祭にあったといえよう。所役の人々はすべて那智山の住人。当日午前中、祭式ののち、斎主(さいしゅ)舞、巫女(みこ)舞、沙庭(さにわ)舞の大和(やまと)舞に続いて田楽、田植式を演じ、12基の扇神輿(おうぎみこし)を奉じて滝壺(つぼ)のもとに下り、大松明(たいまつ)12基を捧(ささ)げてこれを迎え、祭式ののち、田刈(たがり)舞、那爆(なばく)舞を演じる。田楽は笛2人、編木(びんざさら)4人、腰鼓(こしつづみ)4人、シテテン(小鼓)2人の左右あわせて12人の編成で、21曲と番外のシテテンの舞があり、現存田楽のなかではもっとも定型を備えた一つである。ただし曲芸の高足(たかあし)などはない。1976年(昭和51)「那智の田楽」として、国の重要無形民俗文化財に指定された。

[新井恒易]

 また、同名称で2012年(平成24)ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。

[編集部]


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