通(つう)(読み)つう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「通(つう)」の意味・わかりやすい解説

通(つう)
つう

江戸後期、ほぼ宝暦(ほうれき)(1751~64)から寛政(かんせい)(1789~1801)にかけての、江戸人の美的生活意識。上方(かみがた)の「粋(すい)」に通ずる語で、一般的には人情機微に通ずるの意味であるが、時代に限定されて、江戸では主として遊里に集中して、客が遊女との愛情の応酬に際して、渋滞なく行動できることをいい、さらに転じて、遊里における社交上の教養・風俗のすべてに通ずる意をさす。それは宝暦ごろから、札差(ふださし)を中心とするいわゆる十八大通(だいつう)によってリードされ、遊里に遊んだ武士町人に受け継がれて、江戸の遊里小説洒落(しゃれ)本を支える理念となっており、安永(あんえい)(1772~81)期には通のなんたるかをいう通談義の洒落本が続出しているが、これからもわかるように、「粋」が創造的・人間的であるのに対し、「通」は著しく観念的・規範的である。

[神保五彌]

『神保五彌著『近世町人の美意識――粋と通をめぐって』(『講座日本文学の争点4』所収・1966・明治書院)』『中野三敏著『戯作研究』(1981・中央公論社)』『『通と文学』(『中村幸彦著述集5』所収・1982・中央公論社)』

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