軟質磁器(読み)なんしつじき

食器・調理器具がわかる辞典 「軟質磁器」の解説

なんしつじき【軟質磁器】

長石石灰骨灰(こっぱい)、フリット釉薬原料をガラス状にして細かく粉砕したもの)などの媒溶剤融点を低くする働きをする物質)成分を多量に用い、施釉(せゆう)後の焼成硬質磁器に比べて低温で行う磁器。白く緻密で硬質磁器よりも透光性が高いが、尖ったものでひっかくと傷が付きやすい。主として学術的・工業的な区分に用いる用語であり、厳密な規定はない。ヨーロッパでは16世紀から18世紀にかけて開発、保護されて発展したが、耐久性に欠け、また焼成中に変形しやすく大量生産には向かないため、こんにちではボーンチャイナなどの高級食器や美術工芸品など、限られたものだけが生産されている。◇「軟磁器」ともいう。⇒磁器

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「軟質磁器」の意味・わかりやすい解説

軟質磁器
なんしつじき
soft porcelain

磁器の一種で,硬質磁器に対する。媒溶原料の配合量が多く,一般的な素地の組成は石英 23.3~24.8%,カオリン鉱物 36.3~47%,長石 24.2~34% (場合によっては石灰石 1.5~2.5%,亜鉛華 1.2~4.0%を加える) 。約 1150℃でまず締焼きをしたあと,釉掛けをしてから釉焼きをしてつくるなど,磁器でありながら陶器の場合と同じような処理をする。透光性が大きく,熱衝撃抵抗が小さい。また酸に弱く,破面粒状を示す。食卓用容器,装飾器のほか工業用にも使われる。

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世界大百科事典(旧版)内の軟質磁器の言及

【釉】より

…ヨーロッパにおける磁器の焼成は1709年ドレスデンのベットガーによって始められ,これと前後して他のヨーロッパ諸国でもこぞって磁器焼成が試みられた。スペインではフリット磁器,フランスではケイ砂,セッコウ,ソーダを溶融し,これに石灰と粘土を加えた,いわゆる軟質磁器,イギリスでは18世紀末に動物の骨灰を混ぜたボーン・チャイナがつくり出された。これらの釉も素地の成分に応じて石灰釉や長石釉などさまざまな磁器釉が用いられている。…

※「軟質磁器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」