資本集約型産業(読み)しほんしゅうやくがたさんぎょう(英語表記)capital-intensive industry

日本大百科全書(ニッポニカ) 「資本集約型産業」の意味・わかりやすい解説

資本集約型産業
しほんしゅうやくがたさんぎょう
capital-intensive industry

生産要素の結合ぐあいの違いに注目して産業を分類した場合、労働者1人当りの設備投資額、つまり労働の資本装備率(単に資本装備率ともよぶ)の高いものを一般に資本集約型産業という。労働集約型産業はその反対概念である。資本装備率が高いということは、それだけ機械化が進んでおり、労働生産性も高いことを意味する。したがって、国際的には、産業の発達した先進国ほど資本集約型産業が支配的であり、国内的には、明治期に移植された近代産業在来産業に比べて資本集約的であったし、製糸綿紡績など軽工業に比べて、鉄鋼、非鉄金属、化学石油精製、紙パルプなど重化学工業がより資本集約的産業であった。企業規模でみても、大企業ほど一般に資本集約的であり、中小企業は労働集約的なものが多く、欧米に比べて両者資本集約度の開きの大きいことが日本特有の「二重構造」の原因とされてきた。しかし、大企業の本格的量産体制が確立した最近では、これと並行して中小企業でも、機械工業電気・電子機器部門を中心に量産型新鋭機械のほかNC(数値制御旋盤など多種少量生産機械、産業用ロボットなど個々の企業の特性にあったME(マイクロ・エレクトロニクス)利用の省エネ・省人型の新鋭機械の導入が盛んで、資本集約度の高い企業が急速に台頭している。

[殿村晋一]

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世界大百科事典(旧版)内の資本集約型産業の言及

【産業分類】より


[分析目的に合わせた産業分類]
 最近は,産業の分析目的が多様化しており,それに合わせた産業分類を行うケースが多い。(1)商品の用途面から分類して,生産手段を生産する投資財産業,原材料を生産する生産財産業(以上をまとめて基礎産業),消費にあてられる財を生産する消費財産業(耐久消費財に限定する場合もある),(2)資本装備率が高く,高度な技術と設備を必要とする重化学工業(生産財,投資財関連の産業が多い)とそれらの点で反対の軽工業(消費財関連の産業が多い)という分類,(3)生産過程における加工度の違いによる区分で,生産のための資源や材料を生産する素材産業(素材産業・加工組立産業),材料を加工して単品や部品を生産する加工産業,部品や材料を用いて完成品を生産する組立産業,(4)生産要素の結合具合の違いにより資本装備率の高い資本集約型産業(資本集約型産業・労働集約型産業),それが低く,労働との結合度が高い労働集約型産業,などがある。 また,製造業の内分類として,自動車や電機などの産業を加工組立産業,技術進歩の影響度が高い産業を技術集約型産業,ハードウェアよりもソフトウェアが重要なコンピューター産業などを知識集約型産業などという場合もある。…

【資本集約型産業・労働集約型産業】より

…労働力または生産量に対比して大量の資本設備を用いる産業を,一般に資本集約型産業という。労働集約型産業は,その反対概念。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」