谷弥五郎(読み)たに・やごろう

朝日日本歴史人物事典 「谷弥五郎」の解説

谷弥五郎

没年:明治26.6.8(1893)
生年:明治1(1868)
明治期の博徒。「河内10人斬り事件」の犯人。妹おやなと共に孤児となり,河内国(大阪府)赤坂水分村で成長し,猟師の仕事と博奕で暮らす。10歳年上の義兄弟の木戸熊太郎(木戸家は農家)が,村会議員松永家の次男寅次郎に妻を奪われ,借金を踏み倒されたうえ殴打された怨みに加担して,明治26(1893)年5月25日夜半,おりからの豪雨をついて日本刀と村田銃で松永一家を襲い,老婆と幼児を含む10人を殺害した。弥五郎と熊太郎は人口500人の村に官憲400人が駐屯するという大がかりな山狩りによって,事件2週間後,金剛山で刺し違えて自決した。事件の背景には,真土村(神奈川県)騒動,秩父困民党事件など,農民と博徒が結ぶ反政府運動にこりた明治政府が,日清戦争1年前に村を締めあげた一連の政策があった。<参考文献>剣花道人編『残害事件河内十人斬』

(平岡正明)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「谷弥五郎」の解説

谷弥五郎 たに-やごろう

1868-1893 明治時代の博徒(ばくと)。
明治元年生まれ。26年義兄弟の木戸熊太郎が大阪府赤坂村の村会議員松永家の次男に妻をうばわれ,借金をふみたおされたことから,ふたりで松永家をおそい10人を殺害。警察におわれ,事件2週間後の同年6月8日熊太郎とともに自殺した。26歳。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

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