計算書類(読み)けいさんしょるい(英語表記)statements of account

日本大百科全書(ニッポニカ) 「計算書類」の意味・わかりやすい解説

計算書類
けいさんしょるい
statements of account
financial statements

会社法で規定され、貸借対照表損益計算書株主資本変動計算書および個別注記表により構成される、いわゆる一般にいう財務諸表。株主や債権者等に対して会社の財政状態や経営成績について開示するための法定開示書類である(会社法435条、会社計算規則91条)。そのほか、会社法で作成が義務づけられている事業報告書と附属明細書を含め、計算書類等とよぶこともある。

 旧商法からの内容変更としては、旧法で規定されていた貸借対照表や損益計算書の注記事項は、個別注記表に一括記載される点、利益処分(または損失処理)に関する議案の内容が剰余金配当や株主資本の部の係数の変動等の手続に移行したことから、旧法の利益処分案(または損失処理案)のかわりに株主資本等変動計算書を作成することとなった点、また、旧法で営業報告書とされていたものが事業報告書に名称変更され、計算書類の体系から明確に除外された点などがあげられる。

 連結決算を実施する会社に対しては、連結計算書類の作成が義務づけられるが、個別決算のみを行う会社同様に、連結貸借対照表および連結損益計算書に加え、連結株主資本等変動計算書および連結注記表を作成することが求められる。

 さらに、会社法上、期中の損益を分配可能額に反映させることが可能になったことに伴って、臨時決算制度が導入されることになったが、その場合には、臨時計算書類の作成が必要となる。なお、前記の計算書類には会計監査人または監査役会計監査が要求される。

[近田典行]

『箕輪徳二他著『会社法と会社財務・会計の新展開』(2008・泉文堂)』『トーマツ編『会社法計算書類作成ハンドブック』第3版(2009・中央経済社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「計算書類」の意味・わかりやすい解説

計算書類 (けいさんしょるい)

株式会社(および有限会社)の企業内容を表示する書類。財政状態を示す貸借対照表,経営成績を示す損益計算書,営業内容を報告する営業報告書,利益の処分(または損失の処理)に関する議案である利益処分案(または損失処理案)の四つがこれに属する(商法281条1項,有限会社法43条)。物的会社たる株式会社と有限会社において,会社債権者や株主等のために,その営業・損益または財産の状態を明らかにするための制度。株式会社の取締役は毎決算期にこれらの書類を作成し,取締役会による承認,監査役による監査(大会社では会計監査人による会計監査)を受け,株主総会に提出して,貸借対照表,損益計算書および利益処分案(損失処理案)の承認を求め(営業報告書についてはその内容を報告する),それらの承認後,貸借対照表の公告をする(商法283条)。なお,これらの計算書類の明細を示すために計算書類付属明細書が作成される。計算書類および付属明細書の記載事項は,法務省令〈計算書類規則〉(正称は〈株式会社の貸借対照表,損益計算書,営業報告書及び付属明細書に関する規則〉)に規定されている。

 以上は計算書類に関する商法の一般原則であるが,大会社については特例があり,会計監査人および監査役会がそれぞれの監査において適法であると表明した場合には,貸借対照表と損益計算書は取締役会の承認だけで確定するので,株主総会の承認は必要なく,営業報告書についてと同様に,その内容を報告すればよい(商法特例法(正称は〈株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律〉)16条1項)。したがって,この場合に株主総会の承認を要するのは利益処分案だけである。これは,大会社については,企業内容の確定と利益処分とを区別し,監査の適正意見を前提として,前者を取締役会,後者を株主総会の権限とする道を開いたものである。なお,以上と並んで投資家保護の見地から,証券取引法に基づき,大蔵省令〈財務諸表規則〉(正称は〈財務諸表等の用語,様式及び作成方法に関する規則〉)が定められ,一定の会社について,公認会計士による監査が強制されている。
財務諸表 →商業帳簿
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百科事典マイペディア 「計算書類」の意味・わかりやすい解説

計算書類【けいさんしょるい】

財務諸表とも。株式会社においてその財産・営業の状態を明らかにするための書類。取締役が作成し,監査役の監査を経て,定時株主総会に提出し,報告するか承認を受けることを要する。貸借対照表事業報告損益計算書,株主資本等変動計算書,個別注記表など(会社法435条以下)。→財務諸表
→関連項目営業報告書会計監査人会計参与

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「計算書類」の意味・わかりやすい解説

計算書類
けいさんしょるい
account statement

会社が事業年度ごとに作成・保存することを義務づけられた書類の一つ。株式会社の場合,貸借対照表損益計算書,株主資本等変動計算書,個別注記表からなる(会社法435条2,4項,会社計算規則59条1項)。

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会計用語キーワード辞典 「計算書類」の解説

計算書類

商法上の財務諸表のこと。貸借対照表・損益計算書・営業報告書・利益処分案または損失処理案などが含まれます。

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世界大百科事典(旧版)内の計算書類の言及

【決算報告書】より

…決算の最終手続として作成される書類を総括する用語であるが,具体的には,商法では計算書類,証券取引法や企業会計原則では財務諸表といわれるものを総称する用語である。 商法によると,取締役が毎決算期に作成し,取締役会の承認を受けることが義務づけられている書類(計算書類)は,(1)貸借対照表,(2)損益計算書,(3)営業報告書,(4)利益の処分または損失の処理に関する議案(通常〈利益処分案〉という),(5)付属明細書,である(商法281条1項)。…

※「計算書類」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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